電化厨房最前線(12)カジュアル割烹「紗舞璃」
「紗舞璃」(しゃぶり)は、渋谷パルコパート1の7階にあるしゃぶしゃぶと日本料理のカジュアル割烹の店だ。日本料理を手ごろな価格で提供し、幅広い年齢層の客にうけている。昨年の11月のリニューアル時に、客席に電磁コンロ内蔵型テーブルを導入した。そのきっかけと使い勝手について聞いた。
紗舞璃は総席数七八席、うちカウンター席が一四席。電磁コンロは二八台使用している。高級感あふれる店内のカウンターでは、客の前で料理人が腕を披露する。
「ガスの時は、店内の温度がフロアの空調の能力を超えるほど上昇して大変でした。お客さまから暑いと苦情を言われることも多かったんです。それで改装をきっかけにガスコンロを電磁コンロにすべて切り替えました」と語るのは営業部長・寺西謙一さん。
「電磁コンロは、店内の温度が上がらないから楽です。お客さまからのクレームも一切なくなりました。それに店内に落ち着いた雰囲気がでましたね」
寺西さんが、電磁コンロ内蔵テーブルを採用する時に一番こだわったのは、天板の下のコンロ内蔵部分が薄いものを選ぶこと。だからこの店の電磁テーブルは、コンロの内蔵部分が約一五センチメートルしかない。多くのメーカーに問い合わせ、やっと一社から「今度出ます」という新製品の話を聞き、採用した最新型のものだ。
「最近の若いカップルは、向かい合うより並んで座るのを好みます。二人が並んで座れる半個室型のカップルシートをつくるためには、この薄さがどうしても必要でした」
カップルシートはL型の二人席。コンロ収納部分が薄いので、客が寄りそうように座っても、コンロがじゃまにならない。
寺西さんの狙いは大きく当たり、四つあるカップルシートで席を確保するのには、予約が必要なほどの盛況ぶりだ。
代表取締役の熊谷紀男さんも「電磁テーブルは、経済的なうえ安全で清潔。まさに食のサービスには、必要不可欠なものだ」と太鼓判を押す。
電磁コンロは、経済効果も大きかった。ガスの時には、ひとつ四万から五万円する銅鍋を使い、使用後には毎回三〇分つけおきしてから、磨いて汚れを落としていた。磨くので、どうしても傷みも早く、修理代もばかにならなかったという。電磁にしてからは鍋の汚れも早く落ちるので、洗剤の使用量が三分の一に減り、洗い場の人員も一人削減できた。高級感ある食事を、ゆったりと手ごろな価格でというコンセプトの実現に、電化は大きく貢献しているようだ。
この店は、ランチタイムが午前11時から午後3時、ティータイムが午後3時から5時、ディナータイムは午後5時から。しゃぶしゃぶ以外にも、二週間ごとにその時々の旬の素材に料理人が腕をふるう日本料理メニューが人気だ。
◆現場からの声 加賀紀雄店長
電磁コンロは片付けが早いのがいいですね。女性客には、きれいなテーブルで、ゆっくりデザートを食べられると喜ばれます。ランチタイムは、電磁コンロを使用したしゃぶしゃぶが人気です。
なかでも豚ロース100gに小鉢、白飯または、きしめん、野菜の盛り合わせをつけた「しゃぶりランチ」(税込み1000円)は、月間2000食を販売する人気のメニューとなっています。秋からは昨年好評だった「鴨のツミレ鍋」を再開します。これからも電化のよさを生かしたメニューを増やしてゆくつもりです。
◆店舗メモ
「紗舞璃」/所在地=東京都渋谷区宇多川町一五‐一、渋谷パルコパート1七階、電話03・3464・4711/営業時間=午前11時~午前0時(ラストオーダー午後11時)/使用機器=電磁テーブル三φ二〇〇v三・〇キロワット×一六台、一φ一〇〇v一・四キロワット×一一台/スタッフ=厨房スタッフ五人(うち社員三人)、サービススタッフ一七人(うち社員一人)