新店ウォッチング:「プレタ・マンジェ」日比谷シティ店

2002.11.04 262号 4面

かねてより、英国での評判が、わが国でも話題を呼んでいたサンドイッチ店チェーン「プレタ・マンジェ」の国内一号店が、去る9月25日、東京・日比谷の「日比谷シティ」にオープンした。

この店は、日本マクドナルドの持株会社と英国のプレタ・マンジェ社が折半出資で設立した「日本プレタ・マンジェ」が展開するチェーン店の第一号店で、9月30日には赤坂に二号店が、10月15日には浜松町に三号店が開業している。

プレタ・マンジェは、一九八六年に英国ロンドンで生まれたファストフードチェーンであり、現在、英国内で約一二〇店舗、米国で一三店舗、香港で四店舗を展開している。

季節の新鮮な食材を使用することをコンセプトとしたオーガニック志向のサンドイッチ専門店であり、金融街などのオフィス街を中心に、急速に店舗数を拡大し話題を呼んでいた。近年は、日本の「すし」なども取り入れて新しい展開を行っている。

日比谷シティの一号店は、セルフサービス方式で有名なマクドナルド日比谷シティ店が入店するビルの同じフロア、スターバックスコーヒーの店舗の真向かいに位置しており、地下一階ではあるが、建物の構造上、実質的には一階路面店と同じ位置づけの店舗である。

店の商品は、角パンの三角サンドイッチ、フランスパンのサブマリンサンドであるバゲット、本場メキシコの焼き方で作られたというトルティーヤで包んだラップと呼ばれるタコスなど約三〇種類を取りそろえているほか、クロワッサンやマフィン、デザート、サラダ、コーヒー、フレッシュジュースなど、約九〇アイテムが準備されているという。

調味料として使われるマヨネーズも一二種類が使用されているとのことで、オーガニック素材を中心に厳選された新鮮な食材のみを使用し、合成添加物は使用せず、素材本来の風味や特徴を重視するという商品の基本ポリシーが売りだ。

紙製のシッカリとした包材に入れられた三角形のサンドイッチは二九〇~五六〇円、バリスタが提供するコーヒーなどは二三〇円からという価格帯で、サンドイッチにはグラナリー(穀物系)とセサミという二種類のパンを使用。セサミは日本オリジナルのアイテムであり、このほかにも日本だけのアイテムは数多く開発されている。

このオリジナル商品の開発は、「キハチ」などに在籍していた料理研究家の小暮剛氏が担当している。

店舗のキッチンで調理されたサンドイッチは、「ランガー」と呼ばれる独自のショーケースに並べられ、セルフサービスでドリンクカウンターと兼用の販売カウンターで会計するスタイルだ。

あくまでテークアウト主体の業態であり、本国では「Grab & Go」と呼ばれて忙しいビジネスマンに人気を得ている。

店舗内装は、床が工事現場の鉄板風の滑り止めが入ったアルミ板、カウンターや冷蔵の商品棚はシルバーのステンレス素材、金属パイプで組んだ背の高いスツールと三つのテーブルが組み合わされたイートインスペースの家具など、金属素材が多用された清潔感のあるデザインで、その他の部分は、テーマカラーとなっているエンジ色をアクセントに、淡いパステル系の色づかいでまとめている。

プレタ・マンジェのデザイン上のモチーフは「★」印。ロゴマークや店内の意匠デザイン、カプチーノの泡の上にも、ココアパウダーによる星印のデコレーションが施されている。極めつけは、コールドドリンクに入った星形の氷だ。

同社では、年内に五店舗を出店し、二〇〇四年までに八〇店舗体制を目指すということで、あのマクドナルドが放つ、久々の大型新業態として業界の話題を呼んでいる。

◆店舗データ

「プレタ・マンジェ日比谷シティ店」(会社名=日本プレタ・マンジェ(株)、開業=二〇〇二年9月25日、店舗面積=約三九坪、営業時間=午前7時30分~午後7時(土・日・祝は休日)

◆取材者の視点

臨店時は一号店オープンからまだ二週間足らず。正直言って、実際に店舗を見るまでは、ここまで人気を集めているとは想像していなかった。

平日の夕方、すでにあたりは暗く、しかも雨まじりの天候である。にもかかわらず、店内には常に商品を選ぶ客が途絶えない。ひっきりなしに来店している客の圧倒的大多数は女性である。

時間帯あたりで見れば、来店客数は、すぐ向かいの「スタバ」よりも多いかも知れない。

あたりを見ても、エンジ色の星マークに白のロゴ入りの茶袋風手提げを下げた女性が、そこいら中をかっ歩している。

一時期、スターバックスコーヒーの手提げ袋がおしゃれなアイテムとして持ち歩かれた状況と似ているようだ。

ロゴマークの色づかいなどは、かなり地味だが、米国風の脳天気なデザインよりも、この方が今のわが国のトレンドには合っているのかも知れない。

店舗自体は、いかにも「デザインしました」といった風の最近のカフェ系飲食店に比べておとなしく、あまり印象に残らないが、もともとイートイン空間のためのデザインではない以上、これで十分だと感じる。

店頭には、「一五〇〇食を完売したら閉店。ひとり一個でお願いします」の掲示が掲げられているが、基本的に、ピーク時間帯の短いオフィス街に最適化した業態なのだろう。

プレタ・マンジェの「プレタ」は、ファッションの「プレタポルテ」と同じ「事前に準備した」という意味、「マンジェ」は「食べる」という意味だ。

日本の外食チェーンの中でも秀逸な、予測生産システムを可能にしたマクドナルドのノウハウが、生かせる業態であることも確かだ。

◆筆者紹介

商業環境研究所・入江直之=店舗プロデューサーとして数多くの企画・運営を手がけ、SCの企画業務などを経て商業環境研究所を設立し独立。「情報化ではなく、情報活用を」をテーマに、飲食店のみならず流通サービス業全般の活性化・情報化支援などを幅広く手がける。

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