逆襲する焼き肉業 レインズインターナショナル「牛角」祐天寺店
スキップフロアを登って、扉を開けるとそこはまるで小京都、町屋の「通り庭」を思わせる風情が漂う。東急東横線祐天寺駅から徒歩五分、それが「牛角祐天寺店」だ。
店長の仲野達也氏によると、学生さんや家族連れ、会社員にカップルとさまざまな客が来店するので臨機応変にスペースを演出する必要があるとのこと。しかも客の波は大きく二つに分かれるという。午後5時~8時までは近隣ファミリー層が夕食として利用、9時以降から閉店まではサラリーマンやカップル層が居酒屋的に利用する。
一日平均一五〇人が来店し、客単価はファミリー層で一人平均二六〇〇円。オープンして三年経過したそうだが駅前にひしめく外食店を素通りさせ、ここまで客を引き付けるブランドパワーに衰えはない。
いつもウエーティングがかかると評判のこの店にはお門違いかと思いつつ新規顧客の獲得方法を尋ねてみた。
すると仲野店長は「お客様から頂戴するお名刺を頼りにご紹介の手紙を出させて戴いております」という。見るとレジ横の壁面には確かにたくさんの名刺が張り付けてある。パートナー(アルバイト)が客から名刺を頂戴するのである。これはよほど信頼してもらわなければ簡単に受け取れるものではないが、その秘訣は来店した客にアンケート用紙の記入をパートナー自身が積極的にお願いしていることにある。アンケート用紙にはうれしい接客をしてくれたスタッフの名前や、不満などさまざまな客の声が寄せられる。
ここまではそれほど珍しいシステムとは言い難い。しかし、この店ではその活用方法に違いがある。アンケートの内容は当日の終了ミーティングで発表され、一番多く名前の挙がったスタッフは皆の前で表彰される。そして、その累計をもって、全くの公平さにより優秀なパートナーは、パートナー会食、パートナーフォーラムへとステップアップできることになる。パートナーは皆ゲーム感覚で日々の成果を競っているという。そのような一人ひとりの心掛けがマニュアルにはないふれあいを生み出している。
仲野店長は今後、女性客の来店を増やしたいと思っている。ダイエット志向の強い女性に焼き肉はハードルが高いのであろうか。女性グループの利用がやや少ない。しかし炭火でこんがりあぶる肉は意外にヘルシーなのである。
ほかにもユニークなメニューは続々誕生している。ポンテバニラも徐々に人気だ。積極的なアプローチを計画中である。
◆店舗データ
「牛角祐天寺店」/店舗所在地=東京都目黒区祐天寺二‐八‐七、サンシティー祐天寺一階、電話03・5725・1129/開店=平成11年6月/従業員=二〇人(社員一人)/営業時間=午後5時~午前0時/月商目標=一二〇〇万円