ピカイチキッチン(29)汚れと洗浄の関係

2003.01.15 264号 26面

●正しい食器洗浄の要件

国内では食器洗浄の洗浄温度やすすぎ温度、噴射圧力、噴射湯量、さらに洗浄時間、機内の清掃など食器洗浄作業に必要な基本的要件を教育されないまま、不適切な作業を繰り返している現場も少なくない。こうした現場では、食器の汚れが残るなどのクレームも多い。

したがって、洗浄作業は正しい教育を受けた者が従事すべきであり、安易な人選は避けるべきである。この点DIN(ドイツ規格化協会)では機器の仕様の中で教育に義務化を明記している点見習うべきではないだろうか。

●汚れの正体

食器の汚れは手あかや口紅などを除きほとんどが食品であり、これを完全に取り除くためには食品の性質を正しく知る必要がある。汚れの正体は炭水化物、タンパク質、脂質、ビタミンなどの有機物と無機物の灰分、と水分である。

そこで、これらの成分のうち、量的に多く、かつ洗浄する上で問題となる炭水化物、タンパク質および脂質について考える。

(1)炭水化物

炭水化物は一般の食品、特に植物性食品に広くかつ豊富に分布し、日常摂取する食品のうちの主要な部分を占めるもので、主に糖分である。炭水化物にはブドウ糖、ショ糖、でんぷんやセルロースなどがある。

天然に存在するでんぷん(βでんぷん)やセルロースは水不溶である。また、でんぷんは水を添加し、加熱(調理)すると水に溶けるようになる(α化)。糊化でんぷんも水分が減少し、温度が下がると再び水に溶けなくなるため、老化する前に洗浄すべきである。

老化する心配があるときは、アルカリ性洗浄剤の水溶液に浸漬しておくとよい。やむを得ない事情で老化させてしまった場合は、アルカリ性洗浄剤の四〇~五〇度Cの水溶液に浸漬し、再糊化してから洗浄する。

(2)タンパク質

特に洗浄と関係ある変性は熱変性と表面変性である。洗浄過程で熱変性を起こした場合、タンパク質は凝集・凝固して除去が困難となる。食器上の変性は避けねばならない。卵料理で使用した食器洗浄では六〇~七〇度Cで卵が凝固し落ちにくくなる。

また、魚肉や畜肉のタンパク質の熱変性温度は六二度Cであり、六〇度C前後の洗浄温度で凝固し洗浄困難となる。繊維状タンパク質は特に洗浄で問題になる点はない。また、刺身の食器は浸漬などの前処理を行い、肉汁を除いてから洗浄するように心掛ける。

(3)脂質

食器洗浄機では洗浄水温が六〇度Cあり、洗浄時は、脂質が液状となり、洗剤の作用により完全に除去することができる。油脂汚れの特徴は、温度や水分の影響を受けず、水に溶けないので、水では除去できないが、洗剤を使えば完全に落とすことができる汚れである。

((株)サニテック・本山忠広)

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