トップインタビュー テンコーポレーション・代表取締役社長 岩下善夫氏に聞く

1993.05.03 27号 2面

‐‐外食産業が不況の煽りを受けている中で「てんや」が順調な伸びを示していますが、人気の秘密はどの辺にあるのでしょうか。

岩下 特別にブームになっているとか注目を浴びているとは思っていません。私が外食産業に身を置くきっかけになったのは、マクドナルドの本部に六年ほど、勤務していたことです。これから新しい外食産業にもう一度、取り組むには、まず、景気に左右されないこと。それと外食産業は、いろいろな切り口で展開できることです。また、コンセプトがしっかりしていれば、何十年でも繁盛しつづけさせて頂けるベーシックな息の長い業態にしたいと思っております。

‐‐数多くの業態の中から天ぷらに絞ったのはどうしてですか。

岩下 海外からいろいろな食材が輸入されていますが、日本は周りを海に囲まれていて、昔から微妙な発酵技術を用いた調味料を使用し、米と魚を主食に生活してきたことが日本の食文化であり伝統です。食というのは保守的ですからね。つまり和食回帰ということです。それと和食チェーンにもいた経験を生かしたいですからね。和食というとすぐ思い浮かべるのは寿司ですが、扱う物が「生」だけに衛生面での問題が恐いです。また、技術的にも難しい部分があります。いろいろ調べていくと“天ぷら”がありました。天ぷらは、どんな所でもメニューにありますね。しかし、今まで添え物的に扱かわれてきました。いろいろなネックがありますが、ひとつひとつ解決していけば大きなチェーン展開ができると思いました。

‐‐現在のテンコーポレーションの資本金と出資率はどのようになっていますか。

岩下 資本金は一億円で、丸紅七〇%、日清製油二五%、私が五%の出資で平成元年に第一号店を八重洲の地下街に出店しました。現在は二四店舗、すべて直営店です。

‐‐直営店の売上げはどのくらいですか。

岩下 三月期決算で二二億強です。一店舗当たりの月商は、平均で一一〇〇万円から一一五〇万円です。また一日の回転率は、一〇を超える店もあります。

‐‐今後の出店計画については。

岩下 今後も首都圏を中心に毎月二店舗づつ出店していく予定です。ですから来年の3月には合計で四四店舗になります。また、五期、六期目で八〇店舗をすべて直営として展開していきます。首都圏を中心にして八〇店舗達成し年間総売上げを一〇〇億円にしたいと考えています。

‐‐客層についてはいかがですか。

岩下 ビジネスマン、OL、学生、主婦層、ファミリー客といった若年から中高年まで幅広い客層です。

‐‐直営店だけでなくFC展開はいかがですか。

岩下 現在のところは直営店が先決で、その後、FC展開を考えたいと思います。

‐‐店舗規模についてはどうですか。

岩下 これからはコンパクトな店舗づくりにしていきたいですね。ファーストフードでたとえるなら、マクドナルドではなく、モスバーガーぐらいの規模です。いままでに七八席の大型店舗から一番小さい店舗で二〇席、平均するとだいたい三五席です。それから考えますと、二五坪から三〇坪といったところですね。条件の良い立地に展開したい。そうすれば、お客様にも喜んでいただけるサービスができます。

‐‐急速な店舗展開で人材の問題についてはいかがですか。

岩下 現在は、正社員が六五名います。パート・アルバイトに関しても一店舗当たり三五名が登録していますから全店舗では八〇〇名近くの人が登録していることになりますね。また、毎月四~五名を採用していますし、他店からの中途入社希望者もあります。半年間という短期間で店長になった人もいて、それが魅力のひとつにもなってますね。

‐‐メニュー構成に関しては。

岩下 やはり天丼(みそ汁付き、四九〇円)が五〇%強占めています。続いて昨年の秋に新しくメニューに加えた“とくどん”が二三%位です。また、天ぷらを扱う一番のネックは、なんといっても温度管理が大事ですから、私どもは、チェーン店のどの店で食べていただいても同じ味を楽しんでいただいてます。それには、コンピューターで油の温度をコントロールするオリジナルのフライヤーを開発し、コンピューター制御(油の温度一八〇度)で、調理マニュアルに従えば、初めての人でも一週間で、熟練したてんぷら職人と比べても遜色のないものが作れます。

‐‐将来についてはどうお考えですか。

岩下 海外出店やのれん分けなどを考えております。

(文責・野崎)

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