広島版:ラーメン店の「上海ドラゴン」、全国を視野にFC展開
高級仕出し分野で山陰地区ナンバーワンの規模を誇り、外食事業を手がける(株)味屋コーポレーション(鳥取県西伯郡、電話0859・27・0080)は、ラーメン店「上海ドラゴン」のFC事業に注力、全国を視野に出店を加速させる。また、ケータリング・外食・外食FC本部の三事業ともに注力し、バランスの取れた企業体を目指していく。
同社は一九八二年に設立、店売りの弁当屋からスタートした。その後仕出し料理の事業が軌道に乗り、外食事業を手がけるまでケータリング専業で事業を展開。内容は客単価四〇〇〇~五〇〇〇円を中心とした高級仕出し料理で、安価な弁当や給食、駅弁は扱わず、懐石や松花堂といった付加価値の高いものだけを扱っている。山陰地区で高級仕出しといえば味屋との地位を築き、現在この分野だけで、年間売上高約五億円の規模に成長させている。
一方で「山陰という小商圏の中では(高級仕出し料理の分野を伸ばしていくことに)限界を感じていた」(土井一朗社長)と言う。背景には、人口が六一万人と全国で最も少ない鳥取県の実情がある。
「約一〇年前に(株)オージーエムコンサルティングを取引業者から紹介され、榊芳生社長と出会った」という土井社長。それをきっかけに外食の勉強を始め、一九九七年に外食事業一号店「海鮮ろばた・海王」を、一九九九年に「上海ドラゴン」の基礎となるラーメン業態「こだわりラーメン・風林火山」を、また昨年に焼肉店「カルビ屋・大福」を(すべて米子市内)にオープンし、三店ともに成功させた。
「海鮮ろばた・海王」は、ファミリーでも気軽に足を運べる居酒屋で、どこにもない店づくりと素材にこだわっている。年間の来客数一〇万人の大型店で、客単価は四〇〇〇円。「大福」は韓国の雰囲気とこだわりの食材、リーズナブルな価格でそれぞれ好評を得ている。
二〇〇一年2月、風林火山の店づくりのノウハウと味づくりをベースに「上海ドラゴン」一号店(米子市)を生み出した。現在直営店四店舗(米子市、松江市、加古川市、高松市)、FC店二店舗(鳥取市、出雲市)で四県六店舗体制。今後直営、FCの両面で出店を加速させる。
「まだFC事業部としては産声を上げたばかり、FCオーナーさんと勉強しながら成長していきたい」(同)と述べる。
外食事業を始める前の売上高が約四億円であった同社は、二〇〇二年8月期には一二億六三〇〇万円に拡大した。約四年間で三倍強である。中期目標は二〇〇六年8月期に「上海ドラゴン」二五~三〇店舗規模、総売上高は三〇億円を目指す。
土井社長は外食FC本部事業で展開する「上海ドラゴン」とともに、地元米子で展開している外食事業、ケータリング事業をともに育てていきたいと言う。
「外食事業には寿命(流行廃)があることは事実。外食産業は宿命としてそれを背負っており、(廃りが)来る時は一気にやってくる。また新しく生まれ変わることはできるが、時間はかかる」「(われわれは)たくさんの従業員の生活を守ること、その社会的責任を果たす必要がある。その意味でもそれぞれの業態を均等に育てていかなければならない」(同)
10月には風林火山をリニューアルした「太陽軒」を米子市にオープン。山陰の地から、積極的に攻めの商売を貫く同社に注目である。
二一世紀はアジアの時代ととらえ、アジア大陸の食材・調味料・スパイスを探求し開発したヌーベルシノア(新世紀中華)。ラーメンは四五〇円からでリーズナブル。人気ナンバーワンは、中国の赤唐辛子と一〇種類の香辛料をブレンドした「ドラゴンヌードル」六〇〇円。ほかに白湯スープの「白龍(パイロン)ヌードル」五八〇円~、中国醤油ベースの特製醤油ダレ「支那そば」五五〇円~など。
◆土木建設業からの転進 土井一朗社長
東京生まれで鳥取県米子市育ちの四五歳。家は小料理屋を経営、調理師会の会長職を勤める父親の下で育つ。最終学歴は福岡大学工学部土木工学科。大学時代は少林寺拳法に明け暮れ、技術を身につけることで、自信と勇気、人と人が協調し合うことの楽しさと大切さを学ぶ。味屋の企業精神に流れる根源である。卒業後ゼネコンに就職、二年後に地元で建設業起業のため地元企業に転職するも、土木建設の世界に将来性を感じられず退職。父親が倒れたのをきっかけに家業と同じ飲食業にたどり着く。