新食材注目トレンド:米国でブーム冷めやらぬアトキンス・ダイエット
米国のトレンドとして、「アトキンス・ダイエット」がヒートアップしている。コーネル大学で医学博士号を取ったAtkins博士が考案したダイエットで、「人間のエネルギーを作る、炭水化物(carbohydrate)から作られるグルコースと、脂肪(fat)の二つのエネルギーのうち、一方のエネルギー源を無くしてしまえば、もう一方のエネルギー源が完全燃焼し、肥満になりにくい」という理論だ。そこで炭水化物の摂取をできるだけ削除し、従来のダイエット法では摂取が制限されていた肉や魚、チーズや卵などの高タンパク、高脂肪のものを中心に食べて、ご飯や芋、パン、パスタなどの炭水化物は制限する。このため、別名「Low carbohydrate diet」(低炭水化物ダイエット)とも呼ばれている。
当のAtkins博士が亡くなってからブームが起きたというのも皮肉だが、書店ではAtkins博士の書籍が平積みにされ、売れ行きも好調。肥満による成人病が深刻な米国では、実に「米国人の約四割が一年前よりパンの摂取を控えるようになった」といわれており、パンの消費にも影響を与えている。
とくにファスト・フード業界では昨年末から「パンなし」バーガーを相次ぎ発売。例を挙げると、ハンバーガー・チェーン国内二位のバーガー・キングが、ボールに入ったハンバーガーをナイフとフォークで食べる炭火焼きバーガーの「Whopper」を、ハーディーズは、パンの代わりにミートをレタスで包んだ「Thickburger sandwiches」の販売を開始した。
サンドイッチのサブウェイも、パンの代わりにトルティアのような皮で具を包んだラップサンドを開発。またベーグルチェーンも、炭水化物を約四分の一に抑えたベーグルを発売した。
業界大手のマクドナルドも、「マクドナルドを食べて肥満になった」という訴訟がきっかけとなり、ファストフードと肥満との関係が取りざたされ、野菜をメーンにしたミール・サイズ・サラダを定番化したが、パンなしバーガーの販売も検討せざるを得なくなってきた。
このブームは当面沈静化する気配はない。肉食の米国人にとって好都合のダイエットだからだ。
こうしたトレンドは日本にも上陸してきている。先月発売されたモスバーガーの匠味レタスバーガーがそれ。モスは公式にはアトキンスとはうたっていないが、パンの代わりにシャキシャキのレタスを使ったハンバーガーは、米国のトレンドそのものだ。しかしコメ食文化の日本人に、肉だけを食べるアトキンスダイエットはなじみにくい。むしろヘルシーを売りものに米国式のしゃれた食事スタイルとして、女性を中心にヒットする可能性はあるだろう。
((有)清晃代表取締役 王利彰)