トップインタビュー:レインズインターナショナル・西山知義会長兼CEO
わずか創業から九年で一三〇〇店以上の外食店舗網を構築、さらに昨年はCVSチェーンのエーエム・ピーエム・ジャパンと、高級スーパーの成城石井を傘下に収めたレインズインターナショナル。代表の西山知義会長は今、業界全体として逆風が吹き荒れる中にあっても、成長の勢いを止まらせない。「できるだけ多くの消費者に、期待を上回る感動を持ってもらうこと」が最大の目標だからだ。同社のスローガンは「感動創造」。それを進めるため昨年「バック・トゥー・ザ・ベーシック二〇〇四」をテーマに掲げ、ビジネスの根幹や接客サービス、物流体制などのリストラクチャリングに取り組み、今年はそれを基礎に新たな飛躍を目指す。
〈昨年の8月、エーエム・ピーエム・ジャパンを子会社化した。これは選択肢を広げる一環だという〉
当社はフランチャイズシステムという大きな武器で成長してきたわけだが、これも大きくなると自社内競合を生んでいく可能性がある。われわれは今「牛角」「温野菜」「鳥でん」「土間土間」という主力四業態を展開しているが、そのほかに小売業であるとか、より日常性の高いCVS業態を持つことで、いろいろな選択肢を持つことができた。サービスにしろ、運営にしろ、それぞれの良さを生かしながら、もっとも良いものを消費者に提供していくことができる。
〈エーエム・ピーエム・ジャパンについては、昨年牛角弁当を発売し、早くも事業コラボレーションを実現。また商品の抜本的な見直しも行い、同社の上場を視野に入れている〉
エーエム・ピーエム・ジャパンについては、横軸がうまくつながっていない部分があった。各セクションごとに考えはあろうが、それをトータルで追求していくことを強化できれば、さらに力を発揮していくと確信している。
牛角弁当は過去最高の売れ行き状態となり、またこのようなチルド弁当の強化をさらに推進する。ampmは冷凍弁当という他社にない強みを持っていたが、その強みを生かし切れていなかった。つまり、チルドで十分おいしい弁当までも冷凍にしてしまい、冷凍という強みを逆に弱みにしてしまった。
これからは冷凍だからこそおいしい弁当、例えばパスタや麺類などに特化し、冷凍ならではの商品を追求していく。
〈西山会長は人がどういうものをおいしいと感じているかに強い関心を向けた〉
もともと接客は好きな方で、しかもお客さまが今何を感じ、何に感動するかに興味がありました。つまり人が不満に思っていることを顕在化し、その逆をやれば良いということになる。最初に「牛角」のお店を始めたとき、お客さまのターゲットはどこにあり、いくらで提供したら満足してもらえるか。満足をしてもらうだけでなく、お客さまの期待値を上回る感動をどれだけ与えられるか。それは味だけではないだろうし、お客さまを尊重する姿勢、提供されたサービスの内容などのトータルで決まる。
〈西山会長の言葉は極めて具体的で明確。その分かりやすさがスタッフの働く心を一致させているといえそう〉
お客さまに対してどういった商品をどれくらいの価格で提供したら喜ばれるのか。中途半端なものをやるくらいならやめた方がよい。牛角をやってくる中でよく皆に言ってきたことは「なんでこの仕事をやっているのですか、この仕事があなたでなければならない理由を述べなさい」と。
経営をするということは、明確な目的を持ち、その目的を達成するための計画と目標を定め、それを達成するための環境を作り、従業員全員が一丸となって取り組む。そういう姿勢でないと駄目だといつも考えている。そして、それを常に遂行していくためには、やはり人材育成が欠かせないと感じている。
それと商品についていうと、お客さまの求めているものをまず作る。プロダクトアウトになってはいけない。求めているものは何かを探し出し、その時原価は考えるなと言っています。まず、良い商品を作り、そしてその喜ばれる部分をなくさずに、今度はどうしたらコストダウンしていけるかを考えるようにしています。
〈これら一連の考え方は、同社の年間計画の立て方にも反映される〉
われわれが年間計画を立てるときは、まず何をやりたいかを考える。それが決定した後で、ではそれをどうやっていくかの計画を立て、その後で具体的な目標数値を決めていく。まず数字ありきではなく、数字は後からついてくるという考えで、通常の企業とはまったく逆。
目的とは理念であり、目標とは数字です。この部分を混同せずにきっちり遂行していくことでお客さまに感動を与えられる。そしてそれをノウハウにまで落とし込めば、必然的に業績向上につながっていくのです。
〈成城石井については、まだ仮説の検証の段階だと言う〉
成城石井は、高級スーパーとしてしっかりとしたブランドを持ち、その点は素晴らしい。ただ、ではそれでよいかというとそうではなく、まだ強みを最大限発揮する仕組みになっていない。現在仮説を立てて検証している段階。とりあえず、工場の稼働率を上げることで収益を上げたいと考えている。
また、二〇、三〇歳代にこの高級ブランドをどのように浸透させていくのか、課題はたくさんある。
〈西山会長は、これからの高齢者マーケットにも意欲を見せている〉
これからは、高齢者マーケットも十分狙える。成城石井というブランドがあるし、またampmでは宅配のデリス便というマーケットを持っている。ただ、注意しなければならないのは、高齢者が本当に望んでいるものは何なのか。そういったツボをしっかりと押さえて取り組んでいくことだ。
〈同社はまた、牛角ブランドを使ったリテール向け商品も手がけているが、その分野も大変好調だという〉
牛角という企業ブランドをつけた商品を販売しているが大変好調だ。在庫を持たないメーカーとして、利益も出ている。現在三〇億円を超える売上げとなり、この分野も引き続き継続させていきたい。
(文責・中村雅彦/昨年12月取材)
◆企業プロフィル
「(株)レインズインターナショナル」本社所在地=東京都港区六本木六‐一〇‐一、六本木ヒルズ森タワー二九階、電話03・5775・2001/設立=一九八七年6月27日/資本金=八七億七一〇〇万円/従業員数=連結一六三七人(レインズ六九三人、ampm四七六人、成城石井四六八人)/主な事業内容=飲食店の経営、FC加盟店の募集と加盟店の経営指導、店舗の内外装工事に関する企画、設計・請負、FC加盟店への食材などの供給、CVSのFC展開/主な事業ブランド=「炭火焼肉酒家 牛角」「釜飯と串焼 鶏でん」「しゃぶしゃぶ温野菜」「居酒家 土間土間」「レッドロブスター」「ampm」「成城石井」(以上、二〇〇五年2月末日現在)