フランスワインの基本的な選び方 3つあるワイン料理の特性と相性の妙

1992.05.04 3号 19面

フランス料理を語るとき、欠かせないのがフランイワスン。その奥行きの深さと広がりは、料理と同様、簡単な言葉では説明し尽くせないものがある。フランスワインほど、料理との相性の妙を見せるものはない。当然、そこに“通”と呼ばれるほどのうんちくを見せる人も多く、また、それだけの知識を要求されるのが、ワインという飲み物の大きな特徴でもある。

もちろん、そうした知識に裏づけられた飲み方や楽しみ方の対極に、気軽に、気に入ったものだけを飲む楽しみ方もあって、これはこれでワインが多くの人に愛される理由になっている。それを踏まえた上で、ここでは基本的なフランスワインへの親しみ方について触れておきたい。

フランスワインがよく合うのは、やはりフランス料理。もちろん、それぞれの料理にはそれ相応の望ましいワインとの組み合わせがある。例えばフォアグラやクセのあるチーズには甘口のボルドーワイン(白)、揚げた魚料理や肉料理なら辛口のコート・ドュ・ローヌ(ロゼ)といった具合いである。

正式なフランス料理では、料理ごとにワインが供されるが、通常は一種類で十分。このとき大事なのは、メ‐ンディッシュに最もよく合うワインを選ぶことだ。基本的には、牛や羊の赤肉には赤ワイン、ハムやソーセージ料理にはロゼ、また魚なら白ワインの選択が無難だろう。ワインを味わう、言い換えるとワインの特徴と品質を評価する方法は、三つに大別される。

一つは視覚的な味わい方で、ワインの色調や輝きを見る方法。室光にかざして見ると、それぞれのワインが個性的な彩りを持っているのがわかる。

第二は香り。若いワインなら果実の香り、古いワインなら芳醇な香りがする。ワインの原料となるブドウの品種ごとに、特有の芳香がある。

三番目には、実際に口に含んでみたときに、そのワインの熟成度やバランス、生気などを味わい分ける味覚による方法。このとき、ワインの温度やタンニン成分の有無なども確かめる。これを触覚的な味わい方として、ワインの味わい方を四つに分類する人もいる。

ワインを味わうときに用いる表現がある。「軽い←→強い」「白←→赤」「辛口←→甘口」「若い←→古い」などだが、こうした分け方を知っておくだけでも、ワインを選ぶ際の目安になるだろう。

実際に食卓にワインを出すとき注意したいのは、ワインが非常にデリケートなものだということだ。まず、そのワインには最もふさわしいグラスがあり、ワイングラスなら何でもいいというわけにはいかない。とくにフランスワインは、伝統的なものほど、それぞれにグラスが決められている。まあ基本的には薄手の、曇りがなく、胴部がふくらんだ脚付きといったところが、最大公約数的なワイングラスの条件であり、そのワインの持つ良さを十分に引き出せるものがベストと言える。

また、どのワインにも味わうための理想的な温度がある。辛口白ワインやロゼは八~一二度に冷やすが、甘口の白やシャンパーニュ、発泡性ワインはさらに六度程度まで冷やしてもいい。軽口でフルーティな赤ワインは酒倉の温度、つまり一〇~一二度で出し、それ以外の赤ワインは、室温で出すのが望ましい。

こうして適温にしたワインを開栓するときの注意として、食事の前にあらかじめ栓を開けておく方がいい場合がある。レストランなどでは許されないが、空気中の酸素がワインのタンニンの苦味、渋味を弱めるので、親しい間柄の集まりなどでは、例外として食事の少し前に開けることもある。

二〇〇〇年の歴史を持つと言われるフランスワインは、文字通りフランスの食文化の歴史を語っている。したがってフランス料理との相性が最も良いのは当然にしても、日本料理や中国料理とも、巧みな調和を見せることがある。それだけフランスワインが懐が深く、きわめて柔軟性に富んだものであるということでもある。

フランスワインは、原料のブドウ、産地、畑ごとにその味や香りがことごとく違う。しかし、ワイン王国だけあって、その製造、出荷、流通、消費の各段階において、さまざまな機関が土壌やブドウの木の種類、醸造法などについての厳しいチェックを行っている。要は、さまざまな料理の味覚に合ったワインを見つけることなのだが、千差万別のワインの中から探すのは非常に難しい。ここは一流レストランのソムリエ、ワインの販売に熱心な酒販店のアドバイスを受けながら、かつ前述したような見分け方と合わせて選んでいくという方法をすすめておきたい。何よりも大切なのは、ワインの味覚を「楽しむ」という考え方だろう。

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