電化厨房最前線(39)ホテルオークラ東京 オーキッドルーム
ホテルが電化厨房に転換するケースが増えている。そうした中、「ホテルオークラ東京」では、一昨年にレストラン「オーキッドルーム」の客席中央に電化厨房採用のサテライトキッチンを開設。電化のメリットを積極的に活用し、料理人と客の距離を短縮するほか、五感で楽しむ料理を提供している。
サテライトキッチンは、六角形のアイランド型オープンキッチン。内部にはIHヒーターが5台並ぶ。通常、2人から3人の料理スタッフが料理パフォーマンスを演じている。
「電化厨房は裸火がなく安全性が高い。それに排煙も少ないのでクリーン。お客さまの目前で料理できます」とはマネジャーの小林和彦さん。
「料理作業を目で見て、音を聞いて、そして香りも楽しんでもらう。まさに五感で味わう料理を提供できるのが大きなメリットです」と言う。
ガスに比べて周囲の空気に影響が少ない電化厨房だが、同キッチンではIHヒーターごとに排気口を設置し、さらに空調効果をアップさせている。
「料理人の手元から排煙や排熱を吸収するので、繁忙時に厨房がフル稼働していても、客席を快適な環境に維持できます」
電化のもうひとつの魅力はクリーンな点にある。
「掃除が簡単だから、いつも清潔。それに使用していないときはフラットなので、見た目がとてもスマート。お客さまの鑑賞に耐える機能美がありますね」
数多いメニューのうち3分の1をサテライトキッチンで料理している。とくに週末のブッフェでは、料理スタッフが接客する機会が多くなる。
「お客さまの前では絶対に調理ミスが許されない。裏のキッチンで仕事をする以上に緊張感があり勉強になる」とシェフの市田雅巳さん。「お客のほめ言葉がダイレクトに伝わるのでみんな張り切る」と教育的効果に喜んでいる。
電化のメリットを最大限に生かし、スマートで快適性を追求したこの店のスタイルは、客席調理の理想形であるのは間違いない。
◆店舗メモ
「ホテルオークラ東京 オーキッドルーム」(東京都港区虎ノ門2‐10‐4、本館5階、電話03・3505・6069)スタッフ=調理スタッフ17人/調理器具=IHヒーター、ほか/席数=80席
◆現場からの声 シェフ・市田雅巳さん
電化は火が見えず、火力も数字で表記されます。でも料理人にとって一番大事なのは数字に頼らないこと。食材を自分の目で見て、香りや音で、火の通り具合を確認する。
ガスと違う静かな調理場だからこそ、より集中して食材と向き合い、自分の五感で調理することができます。五感で調理した料理は、お客さまの五感にも必ず伝わります。
電化でそうした訓練ができれば、どんな熱源を使っても自分の感性で調理できるでしょう。
◆三洋コマーシャル販売(株) 個別式循環換気装置「厨房歓喜」
「場所を選ばず設置できる」「揚げ物の熱気とにおいがこもらず快適」「ダクト要らずで近隣環境に優しい」「防災規制下の出店が可能に」「イニシャルコスト削減」「電源ひとつで移動も自由自在」。昨年の発売以来、大反響を得ている電化厨房用個別式循環換気装置「厨房歓喜」の大きなメリットである。
同製品は、三洋電機(株)と東京電力(株)をはじめとする電力会社9社が共同開発したもの。製品特徴は、(1)調理時のオイルミスト(油脂分が混ざった塵埃)、熱、水蒸気、臭気を含んだ排気を調理器の間近で吸収(2)排気中のオイルミストをグリスフィルターで95%以上除去(3)除湿器で熱と水分を除去(4)脱臭フィルターで臭気の90%を消去(5)クリーンにした空気を厨房内に放出し循環させる、など。
また、コンセントさえあれば、移動もレイアウト変更も自由自在。業態変更にも柔軟に対応できる。大型施設では、必要に応じて厨房から飲食会場に持ち出すことも可能だ。
外形寸法=W900mm×D750mm×H210mm/希望価格=130万2000円
問い合わせ=三洋コマーシャル販売(株)産機営業企画部(電話03・5688・6041)