関西版:芦屋タカトラ、トレンドを追いかけるシュークリーム

2006.04.03 312号 20面

黒とショッキングピンクの斬新なカラーで「Takatora」とデザインされたショッピングバッグを持つ若い女性が最近関西で目に付く。シュークリーム店が持つイメージには程遠い勇ましい店名を持つ「芦屋タカトラ」は、駅中やデパ地下の商圏を中心に現在18店舗を展開(06年3月末日)。06年だけで関西16店舗、関東12店舗のオープンを計画し、スピード出店を図っている。

大手アパレル勤務を経て、ギョウザ店とシュークリーム店を運営する元ラガーマンの杉本昌秀代表取締役は、戦国武将の藤堂高虎から「芦屋タカトラ」を、別業態のギョウザ店でも名乗っている社名「芦屋ぎんなん」を織田信長の好物ぎんなんから名付けた。

戦国武将のように驚異的なスピード出店を図る「芦屋タカトラ」だが、店舗設計と商品へのこだわりは人一倍だ。シュークリーム専門店とは一線を引いたハービスエント店(大阪市北区)は劇団四季の大阪四季劇場に隣接した新しい形のカフェレストラン。フレンチベースの創作料理にスイーツと「芦屋タカトラ」が独占的に取り扱っている「Haas&Haas」の紅茶で、ラグジュアリーなブランドイメージを構築している。

3月にオープンしたばかりの新宿ごちそうビル店(大阪市阿倍野区)は、カフェ仕様だがセレブ感も漂う店づくりでオープン以来好調な滑り出し。駅中やデパ地下を中心に多店舗展開しているテークアウト店は、平均3坪のシンプルな造りのスペースに、ベーシック10種類と季節のシュークリーム、プリン、エクレアで平均月商400万円、阪急梅田駅内店はアルバイト2人で月商800万円を上げている。テークアウトは雨の日には売上げが20%伸びる効率の良い業態だ。

関西では古くから「ヒロタ」のシュークリーム、全国区になった「ビアード・パパ」のサクサクシュークリームがあるのに、なぜ今「芦屋タカトラ」が注目されているのか。

「目指しているのは『セレブ感』が漂うシュークリーム店」(杉本氏)と、もともとケーキ店の隅で「100円台」のイメージがあるシュークリームをキャラメル、エスプレッソ、アーモンドチョコ、クッキーチョコなどに化粧し女性の視覚を刺激した。

「良い素材、食べておいしい、味に自信があるのは当たり前。そこにエンターテナー的要素を加えたかった」(杉本氏)と、パッケージにヒョウ柄やゼブラ柄などを自らデザインし、これまでのスイーツが持つ「ファンシーさ」から「かっこよさ」を表現した。

各店舗にはボックスを常時5~6種類用意し、お客さんが好みの箱を選べるシステムを導入したことも「特別感」が好きな女性の感性をくすぐっている。

「シュークリームは、ベンツを5台持っているセレブ主婦も高校生も食べる国民食」(杉本氏)としながら、「ファッション雑誌を読みトレンドを追いかけている30歳代女性」をターゲットに据えている。40歳代の大人の女性はより若く見せる努力をし、20歳前後の若い女性はより大人っぽく見せたい願望がある。その両方のニーズに対応するために、トレンドの中心になりやすい女性層をターゲットにしたことで上下からの押し上げを狙っている。

「トレンドは変わっていくもの」とアパレル業界を経験している杉本氏は「宝石のようなシュークリーム」を作るためにネイルアーティストとコラボレーションしたり、カルティエに許可をもらったカルティエ風パッケージデザインを限定生産するなど、次々と斬新な企画で女性の心をつかんでいる。

新メニューやパッケージ、すべての店舗デザインも手がける杉本氏には「ゆくゆくは店舗プロデュースで安藤忠雄氏と一緒に仕事をする」という夢がある。3月15日には福島のタカトラロッソ店をオフィス兼見せる工場として大胆にリニューアル。駅中やデパ地下出店が続いている中、大きなガラス張りの工場はアイキャッチ効果も高く、新規出店の際のプレゼンテーションの場として活用できるからだ。

今後は雑貨を中心に置いた店舗や、海外進出を計画している。今年は関東を積極的に攻め、近い将来にはニューヨークに「芦屋タカトラ」を出店し、08年をめどに株式上場も視野に入れている。

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