外食史に残したいロングセラー探訪(2)ピザーラ「モントレー」

2006.12.04 322号 10面

いまや数多くの宅配ピザ店で人気定番となっている「ポテトとマヨネーズを使ったピザ」。この、まだ歴史の浅い新種ピザは、(株)フォーシーズが手掛ける「ピザーラ」の「モントレー」が発祥だという。ピザの既成概念を見事に打ち壊した「モントレー」の誕生には、どのようなドラマがあったのだろうか。

それは1987年にピザーラ1号店がオープンした後、まだ10店舗ほどの規模で展開していたころの話である。

そのころピザーラでは、スタッフの賄い食として「店ピザ」を作ることが認められており、スタッフは好みの素材をトッピングして思い思いのピザを作っていた。当時、スーパーバイザーとして各店舗を巡回していた浅野秀則社長は、その「店ピザ」には必ず、コーン、オニオン、ツナ、マヨネーズがトッピングされていることに気付いた。

その店ピザをヒントに商品化したのが「スタッフス」(M1890円/L2835円)だ。「ピザにマヨネーズ!?…意外においしい!」と、一躍人気メニューとなり、「ピザにマヨネーズがマッチする」ということを同業他社に知らしめる結果となった。

スタッフスの好評を得て、「マヨネーズが合うならばツナの代わりにポテトサラダを使ってみてはどうだろう」というアイデアが生まれた。しかし、ただポテトサラダをのせるだけではパンチがない。「ならばポテトサラダにはハムが入っているので、代わりにショルダーベーコンを入れてみよう」とし、試行錯誤の結果、ポテト、マヨネーズ、ショルダーベーコン、コーン、オニオン、ピーマン、ブラックペッパーというトッピングが決まった。

ピザーラのメニュー名には、地名が使われることが多かった。そのため「ポテトだから“アイダホ”」という案も出たらしい。だが、浅野社長の脳裏に浮かんだのは、「カリフォルニア州の高級リゾート地“モントレー”の人々が、このピザを食べているイメージ」であった。

そして1989年、「モントレー」を発売。TVCMのキャンペーン効果と相まって圧倒的な大ヒットを記録し、同業他社がこぞって追随するという業界珍事となった。

発売当初から基本レシピは変わっていないが、生地やチーズは時代に合わせて少しずつ改良を施し、とりわけ「ポテトとチーズの量、生地の甘さといったバランスを大切にしている」という。また、現在はトマトソースとカレーソースの2種類から選べるように進化している。

小さな子どもからお年寄りまで、幅広い年齢層に好まれているが、腹持ちのよいポテトを使い、ボリュームがあることから、若者層からの支持が高い。

ピザーラの商品理念は、メニューのひとつひとつを大切な「タレント」として育て上げること。「モントレー」がロングセラーたるゆえんも、そうした企業姿勢にもあるのだ。

●企業データ

店名=ピザーラ(全国535店舗)/経営=(株)フォーシーズ/本部所在地=東京都港区南青山5─12─4、電話03・3409・6000/創業=1987年4月

◆モントレー(M2100円/L3150円)

1日平均食数=100食以上(1店舗)

素材名=スライスポテト 短時間処理で鮮度生かす

北海道産ジャガ芋(男爵)を使用。皮付きの状態から製品になるまで2時間という短時間処理を行い、一貫生産ラインによって原料本来の風味や味を最大限に生かしている。調味には、マヨネーズベースに玉ネギや隠し味のバターを使い、子どもにも喜ばれるように、やや甘めにアレンジしている。また、ポテトの中心までしっかりと味が浸透するように温かい状態で調味し、ポテト独特の食感を生かすために賞味期限の短いチルドポテトで流通させている。

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