町で見つけた感動のすごい店:浜松市中区「浜松ギョウザ むつぎく」

2007.03.05 325号 3面

静岡県浜松市は、ギョウザの消費量が栃木県宇都宮市に次いで日本第2位の町。丸皿にギョウザをドーナツ状に並べ、真ん中にモヤシを盛り付けるのが、浜松ギョウザのお約束である。せっかく浜松に来たので、本場の浜松ギョウザを食べたいと思った筆者は、宿泊したホテルのフロントで一押しのギョウザ屋を訪ねた。

ホテルマンが紹介してくれた店はJR浜松駅から徒歩5分、浜松市の歓楽街のほぼ中心にある「むつぎく」だ。なにやら艶っぽい店名だが、それもそのはず、この店は元・桶屋で、商売換えしても屋号はそのまま使っているのだ。テキパキとよく働く明るいお母さんが、店に嫁いだ直後の1962年から45年間にわたって切り盛りしているという。

入った途端に驚いたのが店内にいる多種多彩な客層。10席ほどのカウンター席ではギョウザをさかなに飲む中年男性やギョウザ定食を食べる若者、テーブル席ではサラリーマンや女性だけの小グループ、奥の座敷では団体客が10人くらいで飲んでいる。ギョウザで宴会をするのを見たのは長い人生で初めてだ。

自慢のギョウザは8個入りの小(420円)から20個入りの特大(1050円)まで4種類。まずは試しに16個入りの大(840円)を注文した。オーダーを受けてからギョウザを包んで焼くのが基本。10分ほどで出来たてのギョウザが出てくる。ギョウザの包み方が実に見事で、皮にあんをのせると水を付けずに軽く4回ひねるだけ。なぜかこれで解けずにシッカリと焼ける。

出てきたギョウザは皮がパリパリ、中は空気が入ってフワフワ。あっさりしているのにコクがあり、そのままでも食べられるが特製たれに漬けて食べると、すこぶるうまい。あんの中身はキャベツがほとんどなので、キャベジンを飲みながら食べているようなもので、胃にもたれずにいくらでも食べられる。

お母さんにレシピを聞くと、キャベツ9に豚ミンチ1の割合で、ニンニクも入っているが、当たり鉢と当たりこ木(お母さんは、すり鉢・すりこ木とは言わない)で押しつぶしてあるので風味はあるのににおいは出ない。あんは前日に仕込んで一晩寝かせる。あんが終われば売り切れ御免。皮は特注でとても薄く、キャベツの水分だけで皮が簡単に付くようになっている。

あまりにもおいしいので、12個入りの中(630円)をもうひとつ追加注文した。

お母さんは本当に気さくな人で、猜疑心というものがみじんもない。秘伝のレシピをいちげんのうさんくさい客に教えるだけでなく、試しにと特注のギョウザの皮まで1枚くれた。

レシピを盗んで作っても、このお母さんの味は絶対に出せない。「むつぎく」のギョウザはお母さんの味だからだ。

(繁盛店評論家谷やん)

◆「むつぎく」/所在地=静岡県浜松市中区千歳町54─1/営業時間=平日・正午~午後2時、5~11時(休日9時)

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