外食史に残したいロングセラー探訪(7)「キムカツ恵比寿本店」キムカツ

2007.05.07 328号 18面

現在では多くの豚カツ店のメニューに取り入れられている「ミルフィーユカツ」。この新しいユニークな発想の豚カツを世に広めることとなった「キムカツ」が登場したのは、今から4年前、2003年のこと。以来、マスコミにも多く取り上げられ、女性客から絶大な支持を得た超人気店となっている。

「実は、『キムカツ』にはヒントとなった豚カツがあるのです」と説明してくれたのは、(株)インテグレーション事業本部/伊藤良介部長。伊藤氏によると、すでに廃業してしまっているが、十数年前、恵比寿に「重ねカツ」を出していた豚カツ店があったという。

新しい、変わった豚カツを作ろうと考えていた同社では、その「重ねカツ」からヒントを得て商品開発をスタートさせた。

キムカツ“1枚”には、超薄切りにした豚ロースを、なんと25枚以上も重ねているという。これに特製の生パン粉をつけて低温の油でじっくりと8分揚げ、さらに縦置きにして2分間蒸らすことにより熱が均一に伝わり、肉のうまみが最大限に引き出される。

層となった豚ロース1枚1枚の間に肉汁がたまることで、普通の豚カツとは違ったジューシーさを楽しむことができるのだ。

キムカツの決め手となるのは、やはりこの豚ロースの薄さ。スライサーに改良を加えることにより、安定して極薄切りができるようになったという。

キムカツには「ぷれーん」「黒胡椒」「がーりっく」「ちーず」「ねぎ」「梅しそ」と6種類のフレーバーがあるが、一番人気は「プレーン」。ソース、または特製おろしポン酢で召し上がっていただく。

キムカツを揚げている間に、お客には先に細切りの山盛りキャベツを提供する。それは、キャベツに含まれるビタミンUには胃の粘膜を保護する働きがあり、揚げ物を食べたときの胃への負担を和らげてくれるためだ。女性客の多い同店では、こうした心配りも人気のひとつなのだろう。

というのも、同店のコンセプトは「女性が1人でも入れる店」。従来の豚カツ店のイメージを払拭したいと、メニューだけにとどまらず内装やBGMなども女性を意識したものとなっている。その狙いどおり、客層は20代後半~30代を中心とした女性客が約7割を占める。

昨年9月からは、キムカツのニューブランドとして、「ゲンカツ」の展開を始めた。「キムカツ」はキムカツ専門店、「ゲンカツ」はキムカツと厳選カツの店としてメニュー構成の幅を広げている。

現在の店舗数は「キムカツ」6店舗、「ゲンカツ」4店舗。昨年、キムカツの成型までを行う生産体制が整ったため、今後はFC展開を見据えた出店計画を行っていくとのことだ。ジューシーな国産豚と炊きたてのコシヒカリ キムカツの軟らかくジューシーな豚ロースは、群馬県産SPF豚を中心とした国産豚を使用。また、昨年から展開している「ゲンカツ」の店舗では、メニュー名に「特選」と付いたものには、自社の契約牧場で酵素や黒糖を食べさせて育てた、抗生物質はいっさい投与していない豚を使用している。

そして、ご飯を常に炊きたての状態で提供するのも、こだわりのひとつ。コメは新潟と長野の産地指定コシヒカリを併用。自社工場で精米し、独自の技術で洗米・浸漬加工したコメを使っており、15分間で炊き上がる。この15分という時間は、オーダーを受けてからキムカツが揚がるまでの時間とほぼ同じ。そのため、揚げたてのカツと炊きたてのご飯を同時に提供することができるのだ。

●企業データ

「キムカツ恵比寿本店」/経営=(株)インテグレーション/本社所在地=東京都港区南青山5─11─8 レキシントン青山3F 電話03・3797・7999(代表)/開業=2003年4月。/現在、「キムカツ」6店舗、「ゲンカツ」5店舗展開

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