アポなし!新業態チェック(9)andonand(アンドナンド)渋谷公園通りショップ
「ドーナツプラント」や「クリスピークリーム」といった新しいドーナツブランドが話題を集める中、日本のドーナツショップの草分けともいえる老舗チェーン「ミスタードーナツ」がついに、渋谷公園通りに新業態店「アンドナンド」を出店した。
「大人のためのドーナツショップ」をうたった同店は、従来のミスタードーナツ業態では「比較的利用頻度の低い客層であった20~40代のビジネスマンやOLを主たるターゲット」としている。
カフェのスタイルを前面に打ち出し、主力商品をプレミアムドーナツ、クラシックドーナツ、スティック、惣菜パイという4つのカテゴリーに絞り込んで提案。こうしたターゲット客層が集中していながら、既存業態では出店が難しかった都市部の繁華街中心に出店していく計画であるという。
最も価格の高いプレミアムドーナツは、「いちじく黒糖」「ミックスベリー」「メープル」「リッチチョコレート」の4種類で各250円。小麦の配合やバター、卵などの食材にこだわり、食感や風味を大きく向上させた。ドリンクはレインフォレストアライアンス認証のコーヒー豆を導入。カフェラテなどカフェ系メニューを充実させている。ドーナツ180~250円、ドリンク300~410 円という価格帯で、想定客単価は690円。同社では2007年度末までに東京を中心に6店の出店を目指しており、全国の政令都市へのFC展開も検討しているという。
★けんじの評価
今からおよそ35年前、公園通りが命名されパルコが出現したときから、渋谷は全国への情報発信基地となった。
最近では、2001年に四国で生まれた「はなまるうどん」が、翌年に渋谷公園通りに出店して一気に全国区ブランドへとブレークしたのが記憶に新しい。くしくも「アンドナンド」は、その「はなまる」の隣への出店だ。渋谷ホームズといえば、渋谷を知る人にとっては昔から憧れの高級マンションだが、その半地下になった店舗スペースには、これまでも時代を代表するテナントがいくつも入居してきた。この物件は以前フォルクスだったと記憶しているが、今では同店のようなカフェ系の店の方がずっと立地にふさわしい。
さすがに「食材にこだわった」というだけあって、ドーナツはどれも美味だ。低価格のクラシックドーナツでも、控えめなシュガーグレーズが程よく、軽い食感は女性にも喜ばれるだろう。野菜を使ったスープなどのメニューもあり、平日の夕暮れ時にもかかわらず臨店時には次々とお客が訪れていた。
店内で気になるのはレジまわりの動線である。店舗のレイアウト上しかたなかったのだと想像するが、客席キャパが100席の店だけに、一度にドッとお客が来店すると、商品を選ぶスペースがかなり窮屈になり機会ロスが発生するような気がする。
渋谷公会堂が「C.C.Lemonホール」に変わる時代。「アンドナンド」は、そんな時代の雰囲気を感じさせるおしゃれな「ドーナツカフェ」である。
(外食ジャーナリスト 鷲見けんじ)
●店舗概要/店名=「andonand(アンドナンド)」渋谷公園通りショップ/開業=2007年4月20日/所在地=東京都渋谷区宇田川町2─1/席数=100席(禁煙席62席・喫煙席38席)
◆鷲見けんじ=外食チェーン黎明期から、FFやFRなどの動向を消費者の目線で見続けてきたアンチグルメな庶民派ジャーナリスト。甘口辛口を取り混ぜた乱筆乱文でチェーンの新業態をチェック。