21世紀の甘味料「トレハロース」に注目
ヒゲを生やした奇妙な宇宙人の親子が登場するテレビコマーシャルを覚えているだろうか。このコマーシャルによって、トレハロースという甘味料を知った人も多いことだろう。年々、その認知度も高まってきているトレハロースだが、最近では、単なる甘味料としてだけではなく、「料理をさらにおいしくするための素材」としても活用されるようになり、新しい機能性甘味料として外食・中食業界でも熱い注目を浴びている。
◆「トレハロース」は天然糖質
トレハロースとは、砂糖などと同じ、自然界に存在している天然の糖質のことで、さまざまな動植物や微生物などに含まれている。
例えば、干し椎茸は何ヵ月か置いた後でも、お湯や水に浸すと元の状態に戻るが、これはトレハロースの働きによるもの。そのほかにもキノコ類、豆類、海藻類など、数多くの食品にトレハロースが含まれている。
トレハロースは糖質なので一般的には甘味料として使われるが、甘さは砂糖の約半分と低く、すっきりとしたクセのない甘みが特徴。しかし、トレハロースは「高い保水力」「鮮度維持」「食感を保つ」などといった優れた特徴を持つことも分かり、現在ではさまざまな食品で、それらの機能性を生かして使われている。
◆大量生産が可能となり用途が広がる
トレハロースの存在が初めて学術的に明らかにされたのは1832年のこと。その後、トレハロースの持つ不思議な力について、世界中で多くの研究が行われ、その有効利用が期待されたが、トレハロースを抽出する技術が難しく、1kg3~5万円もする高級品であったために広く利用されることはなかった。
だが、1994年に林原グループが世界で初めて、従来のように酵母から抽出するのではなく、でんぷんから直接トレハロースを作る酵素を発見したことにより、従来の約100分の1という安価な価格で大量生産ができるようになった(商品名「トレハ」)。
大量生産が可能になったことで、冷凍食品、レトルト食品、飲料などさまざまな加工食品に利用され、現在、国内の食品メーカーだけでも約1万アイテムでトレハロースが使われているという。また最近では、加工食品だけではなく、化粧品、入浴剤、石けんといった日用品や臓器保存液など医療の現場でも使われている。
◆中食・外食でもトレハロースに期待
このように、さまざまな分野で使用されているトレハロースだが、食関連に話を戻すと、甘さを抑え、しっとり感や軟らかさを保った和菓子や洋菓子が作れることから、和菓子職人やパティシエの間でも大評判となっている。
中食や外食の現場でも活用される機会が増え、トレハロースの持つ機能を使って、メニューのブラッシュアップに役立たせている店舗も多い。
○「命の糖」「復活の糖」といわれる理由
砂漠に生息するイワヒバは、乾燥したまま数年たっても、水さえ加えれば生き返る不思議な植物。近年になってこの不思議な「復活現象」には、生物の細胞内にある「トレハロース」が大きくかかわっていることが分かった。トレハロースが水に代わり細胞を守る働きをしているなどといわれている。