宅配サービスの注目株(2)モスバーガー 潜在ファンは予想以上
FFの先陣を切って、「モスバーガー」が宅配サービスを本格導入。客単価アップの試金石として、価格競争に窮するFF市場から脚光を浴びている。
取り組みは、宅配料200円プラスで商品をお客の手元に届けるもの。既存店の通常営業を強化する、いわゆる“攻めのテコ入れ策”である。今年から導入を加速し、5月末時点で190店舗を突破。今期末(来年3月末)には、モスバーガー約1550店舗の25%強にあたる380店舗に拡大する見込みだ。
展開モデルは立地に合わせて2パターン(右表)。滑り出しの実績は、客単価1850円、顧客満足度95%、常連率30%(月2~3回)と上々で、課題とした在宅ニーズの開拓を着実に進めている。店内営業への支障を踏まえ、基本的に宅配売上げは40~100万円(売上げ構成比10~15%)にとどめる方針だが、中には宅配立地に最適な店舗もあり、すでに上位4店舗が宅配月商300万円を上回ったという。
「育児や療養、内勤などで来店できないという、潜在的モスファンからの注文が、予想以上に多いですね」と反響を説くのは、デリバリー営業部長の石井英二氏。「宅配を宣伝するポスティング(チラシ配布)は、来店意欲の刺激策にもなる」と、相乗効果を視野に意気込む。
また、ホスピタリティーを掲げるモスならではの利点もある。
「宅配は、お客さまから熱のこもった“ありがとう”という言葉をいただけます」(石井氏)。「お客さまのフィールドで得る、店内とは異なるコミュニケーションは、接客サービスの質を向上させる上で、とても貴重です」という。
この勢いにのって、新たに宅配専門店「モスデリバリーキャビン」を東京都江東区北砂で試験展開中。モス既存店エリアの隙間商圏を埋める形で多店舗化を検討中だ。
○宅配事業モデル
◆Aパターン
目標月商=40万円/商圏=半径600m・4,000世帯/宅配方法=徒歩、電動補助自転車1台/客単価=1,850円/常連率30%(月2~3回)
◆Bパターン
目標月商=100万円/商圏=半径1.5km・1万世帯/宅配方法=徒歩、バイク1台、電動補助自転車1台/以下Aパターンと同様
◆モスデリバリーキャビン
目標月商=500万円/商圏=半径2km・6万世帯/宅配方法=バイク6台、電動補助自転車1台/以下Aパターンと同様