今、なぜ空調か 三機工業食品機設部・桜井隆氏に聞く
近年、外食市場でこれまでの「メニュー開発」「サービス開発」に続いて第三の「快適開発」への関心が高まっている。個人を尊重した「快適の演出」は店の差別化へもつながり、集客貢献度も高い。昨今は、快適演出の主役は照明、ミネラルウオーターの提供、バックミュージック、花、絵、空調などでクリーンイメージを売る店も増えている。今回は、空調にスポットをあて「飲食店・厨房における空調の魅力」を三機工業㈱食品機設部長の桜井光隆氏に語っていただいた。
‐‐外食など「空調」に関する一般的設備の実態はいかがですか。
桜井 今まで店舗の「空調」といえばただ暖めればよい、冷やせばよい、というだけだったのですが、最近は「クリーン」な快適イメージを求めるお客様が増えているように思います。天井の吹出し口まわりがすすやタバコのヤニで汚れていたり、換気が悪かったりではきれいな店のイメージもだいなしです。「空調」のもつ付加機能である清浄機能や湿度の調整などへの理解も深まり、さわやかな「クリーン」を演出する店が増加しています。
‐‐「空調」のはたしている役割、魅力につき、もうすこしお話ねがえますか。
桜井 「空調」には店内の快適環境維持のほかにも衛生環境の維持や労働生産性の向上に重要な役割を果たしています。惣菜を大量に生産するような工場では特殊なフィルターを設置することにより除菌・除臭し、温湿度を一定に保つことにより清潔で快適な環境を維持することは今や常識になっています。これはこういった工場に限った話ではなく、六本木のチーズ店などではショーケースの臭いを無臭化しているし、スーパーやファーストフード店、惣菜屋さんでもカビ防止や和洋中の食べ物のお互いの臭いがただようのを防ぐ工夫などに空調のこういった技術が応用されています。
また、快適、さわやかな環境を提供することは、お客に対してのみでなく、従業員にも大きな問題で、昨今の従業員は労働環境の良しあしを待遇の良しあしと同じ感覚でとらえています。店内と調理場は同レベルで考えねばならない時代となったようです。
‐‐コスト的にはどうですか。
桜井 大事な問題ですね。個店の設計をする場合、室内のレイアウトが重要視され、オーナーさんやコック長さんらの意見でプランの変更がかなりあります。その時、空調も考慮した合理的な店舗・厨房設計により、かなり投資、ランニングコストともに下げられます。空調にぜひ関心をもっていろいろご研究していただきたいですね。
‐‐各メーカーは、空調の良さや魅力を外食市場へ情報として提案していますか。
桜井 空調は消費者には目に見えないものだけに苦労もあります。魅力をいかに伝え、認めてもらうか、われわれの課題も山積しています。しかし、他店との差別化をイメージで訴えられる部分は、まずお互いによく研究したいものです。
個店などでよく、座敷や椅子席のかたわらにポンと空調機が露出して置かれているのを見ますが、最近はファッショナブルな製品も多く出ているわけですから、もうちょっと工夫したらいいのにと感じることがよくあります。
住宅展示場と同様「空調展示場」なども置き、啓蒙に力を注ぐ時を迎えているようです。
‐‐将来の設備の展望は。
桜井 昔は窓をあければきれいな空気が入ってきましたが、今は交通事情や都市事情により空気がよごれています。また喫煙についても不快感を覚える人が増えています。「快適の演出」に空調は不可欠で特に空気清浄機能への関心は高まっています。清潔感とともに今や「不快な臭いを消す」ことは今後の大きな課題でしょう。
また、厨房における「空調」の設備例をみると、年ごとに上向きに転じていますし、労働環境への意識も高まっています。しかし小さな個店まではまだまだこれからです。今後、価値が理解されるにつれ、二一世紀に向け、どんどん普及していくのではないでしょうか。