厨房のウラ側チェック(4) 厨房内に潜む細菌達(1)

1992.05.18 4号 15面

今回から、なぜ衛生面に注意をはらい、厨房を清潔にしなければならないかを、調理器具や食材などの一般生菌数の具体的な数字をあげながら話を進めてみます。最初に、話を理解してもらうために、一般生菌数の意味を説明します。一般生菌数とは、細菌の発育に酸素が必要であり、かつ、発育温度が一五度Cから四五度で、最適な温度が三五度Cから三七度の中温菌と呼ばれる生きている細菌数を測定したものです。この一般生菌数のデータを読むポイントは、調理器具等の拭き取りや食品が手元にくるまでの生産・流通を考慮した環境全般の一般的な細菌汚染状況なのです。

では、具体例をどんどん上げて、いかに厨房内が汚れているか、また、きれいにしても、すぐ汚れてしまうのは、“なぜか?”を理解できるでしょう。

調理器具から見ると、まな板は一般生菌数として、一〇平方㎝当りで三〇〇から一〇〇万ぐらいのバラツキがあります。これはなぜか?。毎日業務終了後、沢山のまな板を、各調理担当者が、温湯と洗剤でゴシゴシ洗い、最後に消毒・水洗して、乾燥させるような保管方法をすれば、そのまな板の一般生菌数は三〇〇以下になります。しかし、この様な処置をせず、あるいは適当なことしかしない場合は、まな板であろうが、一〇平方㎝当り一〇〇万程度の数字になります。この一〇〇万という検査結果は、細菌学的に初期腐敗と呼ばれるものです。この様に、まな板一つとっても使用法、洗浄消毒法及び保管法により、検出される一般生菌数は一律ではありません。毎日、各ポジションで使用しているまな板の管理が適格ならば、調理後の一時的な汚れはあっても、それを問題にすることなく、平均的な清潔感を保ちつづけられるでしょう。要するに、洗浄のポイントを把握した処置により、営業中の一般生菌数を低レベルに押さえることが、十分に可能になるわけです。

現実的には、厨房内に潜む細菌を生菌数のみで判断することは困難であります。なぜなら、使用したまな板が、食材ごとに付着する細菌の種類が違うからです。例えば、魚介類には腸炎ビブリオを始めとするビブリオ属が多く、大腸菌などもたびたび検出します。生肉やその加工品からは、サルモネラを始め、カンピロバクターやウエルシュ菌なども検出されます。また、野菜類からはセレウス菌や大腸菌などが多く検出されます。全般的に検出される細菌の代表は、黄色ブドウ球菌です。

以上まな板について詳細に説明した理由は、その他の具体的な一般生菌数の読み方におおいに役立つはずです。次に、ふきんについては、タオル、綿、不織布などの素材により一般生菌数に、大きな影響を与えております。ふきんを使用している現場を頭の中に浮べて下さい。使い方は、食器を拭いたり包丁を拭いたり、まな板を拭いたり、盛付時に菜箸を拭いたりする「拭く」という行為が中心です。他に、なべ掴みとしての使い方、食品の乾燥を防ぐ濡れふきんとしての使い方など色々あります。ふきんは、物を拭くことが本来の役割ですから、素材を選択して簡単に水洗で汚れが落ちる方が好ましいわけです。

タオル地のふきんは、汚れが中に入り込み微生物が中で増殖してきたなくなります。その時、一般生菌数は約一〇万から一〇〇〇万程度になります。この様な状態の時には必ず洗浄してから煮沸三〇分して下さい。綿や不織布は、タオル地に比較して汚れずらく、使いやすいが、薄手のため、若干、使用しづらい面がある。しかし、不織布は水洗いで簡単に落ちるメリットがあり、食材をカットしただけで食べる物については、大変便利である。

この様な使い方の不織布は、一般生菌数が一〇〇〇程度でおさまる。でも、一日の終わりにおいては、洗浄と煮沸は必須です。今回は、まな板とふきんについてお話ししましたが、次回も、厨房内に潜む細菌達をつづけます。

食品衛生コンサルタント

藤 洋

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