魚食材最前線(1) 魚の旬を考える

1992.05.18 4号 20面

初めに魚の旬について考えてみよう。

一昔前は魚には必ず旬があり旬の過ぎた魚は見向きもしなかった。例外的に下りガツオといって秋9月中旬から12月初旬まで、三陸沖から銚子沖までで獲れるカツオは大変油が乗って美味で食通の間では大変喜ばれていた。しかし、現在はそんなことはおかまいなしに店頭で、レストランで、売られ消費者も食べたり買ったりしている。なぜなのだろう。私は大きく三つ程原因があると思う。

第一に世界各地から鮮魚、冷凍魚、加工品が輸入される様になったことや国内冷凍、輸送技術の進歩。

第二に養殖、畜養技術の進歩により多種類の魚が旬と関係なく生産出荷される様になったこと。

第三には旬以外にいつも魚が出まわり、消費者も旬に無頓着になったこと。

以上三点をそれぞれもう少し掘り下げ失なわれた魚の旬と日本人特有の舌の感覚を再び世界一に戻す一助になれば幸いである。始めに第一の問題‐‐。

(イ)輸送、特に飛行機を使用した輸送技術の進歩と輸送単価の引き下げ。

(ロ)各国が二〇〇カイリ専管宣言以後、自国で漁獲し輸出による外貨獲得等によって日本の技術を取り入れ、魚獲、鮮度保持技術の向上。

(イ)については、一例を上げると、一五年程前にアメリカ・ボストン、カナダ・ニューアァンドランド等で、今年問題になったクロマグロが、レジャー産業、スポーツ・フィッシングで獲られた物は当然アメリカでは食べない。このマグロを日本に送り商売として成立させられないかと考えた。

その最初の計画を立てたのがJALである。JALは何とか荷物運賃収入を取りたかったので、日本の商社、水産会社等に話して持ち込んだが皆半信半疑だった。現在はアメリカのみでなくヨーロッパや東南アジア、オーストラリア等世界中から輸入され、生マグロでは、これら輸入品が無ければ対応出来ない時代になった。鯛も同様に空輸され、これはオーストラリアが、日本と逆で日本の夏はオーストラリアでは冬で緯度が逆緯度で日本で獲れる同種の魚が獲れるので、日本のシーズンオフに空輸されて来る。またサンマのシーズンでは昔は浜でしか食べられなかった刺身が現在は東京でも食べられる様になったのも輸送技術の発達によるものと思われる。

これは(ロ)についても同じことで(ロ)の技術進歩と(イ)の技術的進歩との相乗効果で成し得たことと思う。

この様に経済消費形態が変化し、それに合せて魚の流通、漁獲環境の変化等が魚の旬という問題が忘れさせ、消費者も昔の様にこだわらなくなってしまったのではないかと思われる。

ただ残念なことには経済環境の変化からまた家族構成の少人数化により旬だから安く沢山売る沢山食べさせることが出来なくなったことは残念なことだと思う。しかし経済上の面から考えると昔を知る者として単なるノスタルジアではなく、とても悲しいことでありもう一度旬が来る「待遠しさ」と「おいしさ」と「安さ」を取り戻す様にレストラン、料理屋、すし屋等の皆様と考え実現出来ることを考えたいと思う。

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