施設内飲食店舗シリーズ 「日比谷シティ」(東京・内幸町)
日比谷公会堂方面から日比谷通りに沿って、西新橋方向に歩くと、右手に鉄骨づくりのアーチが目に入る。日比谷国際ビル地上一階および地下一、二階の商業ゾーン「日比谷シティ」の入口だ。
同ビルは地上三一階、地下五階の高層ビルで、二階から最上階までがオフィスになっており、七二社が入居している。ビルの前面部分は広場になっており、多目的な空間として利用されるが、現在は冬場の行事としてスケートリンクを開業中だ。
商業ゾーンは前記のとおり、地上一階、地下一、二階の三フロアに展開しており、飲食(一四店)、物販(九店)、その他(一三店)など計三六店が出店している。
飲食店舗は地下一階に一店、二階に一三店を集約、和・洋・中レストランほか、居酒屋、喫茶と多様な業態を展開している。これら飲食店舗はオフィスサポートを目的として展開しているものだが、やはり、ランチタイムともなれば、どの店も列をつくるといった込み具合で、サラリーマンやOLの“給食サービス”の役割を果たしている。
オフィス人口五〇〇〇人以上だが、周辺のビルからも利用客があり、日中に限っては独自の集客力を誇っている。
しかし、これは平日に限っての話で、日曜・祝日には会社が休みになるので、利用客は大幅に減る。
このため、ほとんどの店が休業するという運営方針をとっており、街中の店と比べれば、大きなハンディを持っている。
「一見この場所はいいようには見えるんですが、やはりオフィス街ということですから、土・日になりますと会社も休みになりますので、店舗の利用客もほとんど途絶えてしまうんです。
それと、交通の便が地下鉄の三田線一本ですし、また、この路線はいわば“ローカル線”といった感じですから、山の手あたりからの客を集客しにくい面もあるわけです。
もちろん、客が皆無というわけではなく、日比谷公園や公会堂に来たついでのときとか、近くでビル工事をしている人たちとか、近辺に飲食街がありませんから、そういう人たちがシティにくる場合もあるんです。
ですから、そういう利用客を当て込んで土・日に営業している店も数店あるんです」と話すのは、施設管理会社の(株)日比谷シティ(本社=東京・千代田区)イベント部企画課木村千年課長。
広場でイベント
施設(シティ)への集客力を高めるために、広場でコンサートやワゴンセールなどイベント、販促活動なども実施しているが、しかし、時間帯の問題や経費の問題、また即飲食ゾーンへの集客に結び付きにくいということもあって、費用対効果の面では期待するほどの成果は上がっていないという実情だ。
現在営業している広場のスケートリンクは、集客対策の冬場のイベントで、スケート客にシティ商店会の二〇〇円割引き、滑走無料招待券のプレゼントなどの特典を設けており、とくに、日曜・祝日に限っていえば、平日に比べスケート客が増えるので、その分飲食店舗への客の流れも出てくるという程度で、シティが客で賑わうということにはなっていない。
このため、日・祝日にオープンしている店はわずかに四店舗のみで、少数であれば“共存”が可能ということだ。
しかし、こういった立地環境にあって、万世、中国酒家などは独自の運営システムで客数を確保しており、大きな成果を上げている。
◆万世 10回転の好調ぶり
土・日・祝日ともに無休で営業している店の一つ。肉の万世のラーメンと肉割烹料理の店で、日中はラーメンと定食主体のメニュー構成。ランチタイムにはオフィスワーカーたちの利用が一〇割近くを占め、空席待ちで通路に列をつくる、という盛況ぶりだ。
排骨拉麺八六〇円、特選パーコ九八〇円、てばのせ八六〇円、焼豚のせ九七〇円の麺類に加えては、スープ付き炒飯弁当六〇〇円、排骨麺と炒飯弁当八六〇円、昼の定食メニュー炒飯と拉麺セット一〇三〇円などをラインアップ、味、ボリューム、値ごろ感が受けて、毎日が大盛況というのも納得がいく。
クイックサービス
客数は平日の11時から14時までで七〇〇~八〇〇人、この時間帯で九~一〇回転はする。ランチタイムは13時までが勝負だが、この店は並んでいる客にレジのポイントで注文を取り、それをインターフォンで厨房に流していくというシステムで、客が席に着くと同時に注文の品が出るというクイックサービスだ。
このため、待ち時間が少ないので、客は他の店に流れていかないということになるわけだ。昼の客単価八三〇円。
夜は串焼、鉄板焼、おろしステーキなど肉料理を主体に、五〇種を提供。単品価格は五〇〇~一三〇〇円前後。
サワー、ウイスキー、ビール、日本酒、焼酎などアルコールもあり、夜は居酒屋としての運営形態にもなっている。客単価一九〇〇円。昼の二倍強の客単価だが、客回転は一回転弱といったところだ。
◆中国酒家 広東料理が目玉
店舗面積約一二〇坪、客席数二〇〇席と、シティの飲食店舗の中では最も大きい。この店も無休で営業しており、評判の店だ。
店の売りものは海鮮を主体とした広東料理で、店内のイケスから客が選んだ魚をその場で調理するという、エキサイティングな店舗運営をアピールしている。
料理人はすべて香港の中国人で、ホールサービスも中国人が大半だ。この店のもう一つの売りものは、平日(月~金)の11時から14時までが、セルフサービスとテークアウト、17時から22時までが居酒屋、土・日・祝日は11時から21時までの営業で、飲茶料理の業態に変身するという、場合に合わせての運営形態で、これによって一定水準の集客力を維持していくことに成功している。
幅広い客層
昼は当然のこととして、サラリーマンやOLなどランチ客が主体だが、夜は宴会客が多くなり、客層は二〇代から六〇、七〇代の中高年層までと幅広い。
ビル内の利用客ほか、都内や近郊、大阪、神戸、さらには中国からの旅行者の利用も多く、広く知られた店ということだ。
PR、宣伝効果もあるということのようだが、それだけ質の高い料理とサービスが提供されているということだ。
料理はランチメニューがチャーハン、焼きそば、中華丼、ビーフン各八〇〇円、カレー六〇〇円、日替わり弁当七〇〇円など。
平日の料理は、コースメニューで五〇〇〇円から五万円、土・日・祝日の飲茶料理が五〇〇~一〇〇〇円前後で、客単価は昼一五〇〇円、夜四〇〇〇~五〇〇〇円といったところ。
同店の月商は平均四〇〇〇万~四五〇〇万円をあげている。