飲食店成功の知恵(38)開店編 「定休日」はきちんと取るべき
無理は結局長続きしない
昔から、飲食店は年中無休が原則とされてきた。例外に休むのは盆と正月、というのが当たり前だった。お客はいつ、お店に来たいと思うか分からない。せっかく来たのに休みでは申しわけないし、そんなことをしたらお客を失ってしまう‐‐というのが、その大きな理由だった。もちろん、日本人のよく働くという国民性もあったろう。ともかく、現在でも多くのお店が原則として年中無休で営業しているし、老舗といわれるお店は、まず年中無休である。
一方、定休日をきちんと取るお店もまた、ぐんと増えている。いつ休みなのかはっきりと表示していれば、別にお客に対しても失礼には当たらない、という立場である。
どちらが正しいのか、意見の分かれるところだろう。どちらにも一理はあるし、また、どちらにも独断や思い込みもある。その意味では五分五分。軍配はお客の判断=支持で決まるとしておくほかないようである。そして私の意見をいわせてもらえば、定休日はやはりきちんと取るべきだと思う。
その第一の理由は、無理は結局、長続きしないということだ。商売は“アキナイ”というくらいで、何といっても長く続くことが先決である。とくに飲食業は、毎日毎日、同じ仕事の繰り返し、それで飽きてしまったらおしまいである。
そんな甘いことでいいのか、という意見もあるだろう。もっともである。しかし、時代の影響は絶対に無視できない。また、商売のやり方もシステムでとらえるようになり、昔のような根性論が必ずしも好結果を生むとは限らなくなってきている。ましてや週休二日制、時短に向かっている時代である。オープン当初は、自分のお店を持てた喜びもあってヤル気満々でも、あまりに飛ばしすぎるといずれは、息切れがしてしまうもの。そのために無気力にでも落ち込んだのでは、それこそ元も子もない。
週に一度の安息日という。一日は休んで身体を休め、同時に気分をリフレッシュさせて新たな気分で仕事に取り組む‐‐これもまた、人間の長い歴史の中で定着してきた大きな知恵である。
それでなくても小規模店は、経営者こそ第一の労働力でもある。無理がたたってお店を休むなどということのないよう、しっかりとストレス解消を心がけるべきであろう。自分を含めた従業員のローテーションも、その方がずっとスムーズに運ぶようになる。
留守電話サービスなども
では、定休日をどのように決めるべきなのか。これは一見何でもないことのようだが、よく考えてみるとけっこうむずかしいものだ。
考え方はいろいろあるし、また立地条件によっても違ってくる。たとえばオフィス街などは、人っ子一人いなくなる日曜・祭日というのは当然である。それ以外の、一般的なお店の場合は、おおむね最も売上げの悪い曜日に設定することが多い。最近の傾向は月曜日か水曜日である。
といっても、果たして本当にその曜日が妥当なのかは、それこそケースバイケース、オープン後最低二ヵ月間の毎日の売上げデータを元にして、決めなければならない。つまり二ヵ月間は無休だが、それくらいは何でもないはずだ。また、競合店の定休日ははずして考える、というのもひとつの方法である。いずれにしても、不定期ではいけない。
なお、お店で待ち合わせるお客のために、定休日には留守番電話をセットしておくくらいのサービスは必要。店頭には伝言板を置けばなおいいだろう。また、定休日の翌日のお客を確保するために、何らかのサービス券などを用意することも大事。一方的な休み方ではやはり、熱い支持は得られない。
フードサービスコンサルタントグループ
チーフコンサルタント 宇井 義行