転換期を迎えた外食産業 日本KFC社長・大川原 毅氏講演から

1992.06.01 5号 3面

高度成長経済を背景に、食生活の多様化の波に乗った外食産業は華々して伸長を遂げてきたが、ここにきて景気減速の大波を受け、停滞感を強めており“踊り場”に立たされているが、大河原毅日本ケンタッキーフライドチキン社長がこのほど日本食糧新聞主催「21世紀食品経営者フォーラム」で講演した『転換期を迎えた外食産業』を要約した。

いま、外食産業は転換期を迎えていると言われている。地価が一〇年前に比べて三倍に、人件費が二倍になっているのに対して、売上げが二倍になっているかというとそうではない。人件費は福利厚生費を含めると一〇%アップし、固定負担費と合わせると一五~二〇%毎年上がってしまう。といってメニュー単価を上げていったら非常に危険な状態になる。われわれファーストフード(FF)の客単価は一〇〇〇円を超えると危険だ。

一昨年から昨年にかけて、デニーズを初めとするコーヒーショップは好業績をあげた。当時、コーヒーショップはメニュー単価を上げたが、おそらく客数はその後落ちているのではないか。客単価一〇〇円、二〇〇円の違いが微妙になる。

当社では、ピザハットの宅配をやっているが、三〇〇%を超える伸びを記録している店がある。消費者がさまざまな食行動をしているわけで、このことは逆に、恐ろしいともいえる。消費者のメンタリティーの変革の一端が現われている。

外食が転換期を迎えていることを考える時、自動車産業の動きを見る必要がある。自動車の新車の販売台数が落ち込んでいるということは、郊外レストランが苦しくなるということを意味する。新車を買わない時の心理状態を考える場合、経済的な問題だけでなく、駐車場のこと、自動車で行くとかえって不便になることを考えるべき。車で行くのはダサイということにもなる。これが一番怖い現象だ。

米国では電車を使うのがナウイという。環境問題もからんで、歩くことがビューティフルという時代にもなるということだ。

今まで外食産業を支えてきたのは自動車産業、電器メーカー、食品メーカー、CVSだった。CVSにサプライすることによって食品メーカーが対応し、そのことが外食産業にとってもメリットがあった。ところがCVSがすでに危ないと私は思う。CVSイコール自動車であり、CVSにかげりが出始めている。

外食産業におけるパイの取り合いは熾烈を極め、多種少量体制で対応するやり方は危険ではないか。特色のあるもの、ほかに負けないようなものをしっかりと作っていくことに集中しないと、やっていけなくなるという気がする。

つまり、縮小均衡、特化する生産、特色作りということが緊急課題になってくる。その面での食品メーカーとの対応の仕方が重要になってくる。

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