お店招待席:レストラン「キング」(福岡)県庁内、昼の1時間が勝負

1994.04.18 50号 6面

福岡市の東部、日蓮さんの銅像で市民に親しまれている広大な東公園の一角に、福岡県庁がある。公園内には楠の大樹が多く、5月の節句ごろになると若葉がいっせいに出揃い、新緑が初夏の日差しに映えて目に美しい。

「レストラン・キング」は、同県庁内の議会棟にある。モダンな六角形の四階建てで、二階は県議会の議場、三、四階は各党の控室になっており、その一階部分に位置する。

食堂部と喫茶部があり、年四回の議会開会中はもちろん、毎日午前10時には店を開け、県会議員の方たちをはじめ一般客、県庁職員らが利用する。庭に面した部分は総ガラス張りで、池あり築山ありと眺望もよく、落ち着いた雰囲気を醸し出している。

食堂部分は約二〇〇m2。喫茶部の約一〇〇m2が入口側にあり、双方共通の調理場約一〇〇m2が付随している。客席は全部いす席で四人~六人掛けのテーブルが整然と並ぶ。食堂は議員席一八席と一般席七八席の合わせて九六席。喫茶部は四〇人が座れる。

スタッフは調理長の加藤定男さん以下一〇人。男性は一人で、あとは全部女性が機能的に動きながら持ち場を守る。通常は全員午前8時30分までに出勤、その日の仕込みに入る。しかし、時には一〇〇人~一五〇人の立食パーティー用大皿盛りの注文が入るので、朝7時から総動員で掛かることも。

同店の主なメニューは、ビーフカレー四六〇円、日替わり定食、カツランチ各六二〇円、焼肉ランチ六七〇円、幕の内弁当(梅)、Bランチ各一〇三〇円、ステーキランチ一五〇〇円、A定食二〇六〇円など。

メニューの中で一番出るのはBランチ。サイコロステーキにエビピラフ、白身魚のフライを野菜サラダと洋風に盛り合わせ、ポタージュスープを添えるのでボリューム感があり、配色も美しく食欲をそそる。また、日替わり定食には玄界灘で取れた生きのいい魚を、和・洋・中華にアレンジし、毎日目玉としてつけている。

しかし客席が多く、お昼休みという限られた時間内にドッとくる注文をさばくのは大変だ。一人で二つの火口を使ってフライパンを振り、フライヤーで揚げながら二個のストーブを駆使するなどザラ。「いかに短時間で提供するかに苦心しています」と加藤さん。

味の方でも来客層を考え工夫している。店の性格上、割と年配客が多い。そこであっさりした味に仕上げるよう、かくし味に醤油を使っている。例えばステーキソース。普通はデミを使うが少々しつこいので、ここではあっさりと和風おろし味にしている。

同じ定食では肉を和風おろしにし、エビと魚は中華風にチリソースで調味したり、魚はフライにしてタルタルソースをかけ、エビは塩、コショウし、軽くバターでソテーするなど、変化を持たせながらもあっさりとした仕上がりを心がけている。

一方、視察団への昼食出前も、毎日の業務の中で大きなウエートを占めている。ほとんどが幕の内で、おかずは一五種類から二〇種類と多彩。常時四〇~五〇個出ている。特徴としては博多独特のガメ煮(築前煮)が入ることだ。

ただ、普通の来庁者グループ、つまり食材に制限のない人たちの幕の内はすんなり出来上がるが、外国特に東南アジアや中近東からのお客さん用には気を使う。例えばインドは牛肉がダメ、東南アジアは豚肉がノー、イスラム圏は羊だけなどの制限がある。

このため、提供先しだいでは、幕の内でもおかずが大幅に入れ替わる。調理場でも、その都度神経をすり減らすことになる。

この店は西日本ビル食堂事業部が経営するチェーン店の一つで、運営経費のうち原材料費は売上額の三九%となっている。県庁内に位置しているだけに、お昼の一時間がいわば勝負。座席回転率はおおよそ一回転、月商は三〇〇万円という。

現在、客席数は約一四〇席。県議会開会時は議員や陳情・傍聴人など関係者も多く利用客で賑わうが、通常は昼食が終わり一段落すると、午後は割に閑散となる。立地的にも県庁の西端であり、官庁の性格上、勤務時間中の個人的な利用はあまり考えられない。

このため、来庁の県民や近くの市民に積極的な呼び掛けをしたいが、議会開会中は混雑が予想されるし…と、食事時間外利用の面では痛しかゆしといったところ。

現状を維持しながら、もっと売り上げを伸ばす方法はないかと、加藤さんは目下、レストランキングの飛躍への道を模索している。

(はろ・いさむ)

・住所/福岡県福岡市博多区東公園七‐七、福岡県庁内議会棟一階

・電話/092・651・0856

・営業時間/午前10時~午後5時(毎週土、日曜と祭日休み)

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