ウナギ新業態「うな仙」580円で発進、開発輸入でコスト圧縮

1994.07.18 56号 15面

国際流通グループのヤオハンが、ウナギの専門商社、日盛産業と組んでウナギ専門店「うな仙」のフランチャイズチェーン(FC)の展開に乗り出した。同店では、ウナギの高価なイメージを払拭、並で五八〇円と既存の専門店の約半額で提供する。またウナギを特化した一品メニューにも注力。夜は居酒屋へ業態転換する二毛作店として展開する。このほどオープンした東京・赤坂と銀座の直営店でノウハウを固め、FC募集に踏み切る方針。二一世紀までに五〇〇店を設ける計画だ。消費低迷が続いているウナギの活用法と、専門店の新しい展開例として注目されている。

同店を手掛けるのは、ヤオハン六〇%、日盛産業四〇%の出資で設立した富士恵(株)(東京都中央区、03・5641・0088)。ヤオハンと日盛産業は中国・恵州で養鰻を展開、すでに日本国内の市販用として現地で加工・輸入を行っている。今回の外食産業への進出で、さらにスケールメリットを追求する。

同店の主力メニューは「うな丼並」(五八〇円)、「同・大」(七八〇円)、「うな重」(九八〇円)。大盛はすべて一〇〇円増。ウナギの量は並が八〇g、大が一〇〇g。サイドメニューは「肝吸い」(一五〇円)、「お新香」(七〇円)、両方セットで一七〇円。客単価は六八〇円を見込む。

またウナギは“夏が旬”というイメージがあり、既存店では売上げの波が激しいのだが、同店では年間を通して安定的な売上げを確保するため「うな玉丼」(六八〇円)、「うなとろ丼」(六八〇円)など、ウナギをベースにしたユニークなメニュー戦略も打ち出している。季節に応じた差し込みも導入し、既存イメージを脱却する意向だ。

午後5時半からは一品料理を主力に居酒屋業態で展開する。「鰻の男爵コロッケ」(五八〇円)、「鰻豆腐」(四三〇円)、「うな仙サラダ」(六八〇円)など、ウナギを特化した二十数種類のメニューで、ヘルシー志向の女性客をターゲットにする。客単価は二五〇〇円。

この低価格メニューの実現は、白子の調達から養殖、加工の工程を生産コストの安い中国で済ますため。現地には二〇万坪の広大な養鰻池を設け、システム化を推進。温暖な気候なためウナギの発育がよく生産性が高い。規模と環境のメリットが大幅な原価引下げの原動力だ。

また、ダム近辺に養鰻池を設けているため水質が良く、伝染病への懸念も極めて低い。安定供給を可能としている。

調理オペレーションは、まず冷凍のウナギをスチームオーブンで解凍、次いで保温器にストックする。オーダーに応じて焼き上げるツーオーダーシステムで、三分強で提供する。その焼き方は、上焼、下焼、上焼のパターンだが、網に乗せたウナギを三台の焼器を使って順番に通して焼き上げる。従って、ウナギを返す熟練した手間を省いたマニュアル化を可能としている。

現在日本国内のウナギの消費量は年間約一一万t。そのうち約八万tが台湾、中国からの輸入が占める。全国のウナギ店の市場規模はすし店の六分の一といわれるが、その消費量はここ数年、前年対比五%減のマイナス基調で推移している。

仕入れ値も下がり、スーパーマーケット(SM)の市販用、コンビニエンスストア(CVS)などの弁当でもやたらと目に付く状況だ。低価格な素材になりつつあるウナギを活用した「うな仙」が今後どのような展開を見せるのか。バリュー価格、ディスカウント化が進むなか、同店が消費者の支持を受けるかどうか注目される。(O)

◆「うな仙・赤坂店」(東京都港区赤坂三‐一〇‐四、赤坂月世界ビル一F、03・3585・5788)=三〇坪・四八席(カウンター一六席)/客単価六八〇円(昼)、二五〇〇円(夜)/営業時間午前11時30分(テークアウトは11時)~午後10時30分(午後5時30分からアルコールタイム)/目標年商一億二〇〇〇万円

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