飲食トレンド:元気印の店、集客作戦にあの手この手

1994.08.01 57号 1面

「景気は底を打った」と経済企画庁のご託宣が伝えられるが、外食産業界は依然として厳しい環境にさらされている。「食材の動きは冷えており、まだ回復していない」(大手業務用問屋)状況で、客離れした外食店は集客作戦に必死に取り組んでいるが思惑外れのところが少なくない。しかし、悪戦苦闘のなかで、“元気印”の店があるのも事実で、他店とひと味もふた味も違ったメニュー提案をしたり、サービスを工夫して集客に成功させている。

長びく不況で来店客数、売上げとも落ち込んでいる大手FFは今年に入ってバリュー、ディスカウント作戦を派手に展開しているが、離れた客を呼び戻すまでにはいたっていない。その中で注目されるのがファーストキッチン。競合店が価格訴求を強めているのを尻目に“和風洋食”の新メニューをヒットさせて売上げを伸ばしている。6月の既存店ベースの売上げは前年比九・五%増と絶好調だ。

景気の波を受けにくいとされてきた居酒屋も苦戦が続いている。出店コストを抑えながら新手のサービスで人気を呼んでいる屋台村も一時の勢いがなくなっているが、従来の屋台村とひと味かえた“新業態”の人情屋台が好調に売上げを伸ばしており、出店攻勢をかけている。この人情屋台の売上げは一般の居酒屋の三~四倍と大繁盛しており、現在六五店ある店舗を今年中に一〇〇店舗にする計画だ。アットホームなサービスで人気を得ているが、経営ノウハウも独得のものがあり、居酒屋の新勢力になりそうだ。

外食サービス業の集大成であるホテルでも従来にないサービスを導入して成功しているところがある。帝国ホテルの鉄板焼レストラン嘉門と品川プリンスホテルの居酒屋七竈(ななかまど)だ。“出合いと融合”をキャッチフレーズにしている嘉門はコックが客とのコミュニケーションを図るというサービスに力を入れており、客がコックを指名するケースが増えている。開店してまだ一年だが、当初の予想を上回る売上げを達成している。

七竈は惣菜料理を食べ放題バイキングで提供、女性客の人気を得ている。和食バイキングの珍しさもあって、開店してこの一年間、連日盛況をきわめている。ホール担当の従業員はハッピを着用、店のムード作りの演出も工夫しており、これまでのホテル内レストランとひと味変えたサービスとメニュー作戦で成功を収めている。(2、3面に関連記事)

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