お店招待席 農夫の台所料理「KFCハーベスタークラブ」(東京・吉祥寺)
JR吉祥寺駅南口。井の頭通りに面したビルの一階。通りを挾んで正面に丸井がある。この店は一〇年近くケンタッキーフライドチキン(KFC)の店としてやっていたが、平成4年3月、現在の運営形態に業態転換して再オープンした。
店舗面積は三一坪、客席数五〇席。店の大きさは元のままだが、内装デザインとフロアレイアウトを変えた。
店内は入口を入って正面が小さなテイクアウトカウンター、この左手はサンプルケースとイートインのオーダーカウンター(パントリー)になっている。
客は注文の品をテイクアウトするか、イートインにするか、二つの機能を選択できるわけだが、このサービス機能はKFCの運営形態と変わらない。
もちろん、業態転換したのでメニュー構成は異なる。この店の売りものは、ノンフライドチキンとパン、サンドイッチ類で、素朴感とヘルシーさにこだわったメニュー構成に特色がある。
これはKFCの基本コンセプトであるFHH(Fresh Healthy Hand‐made)の理念をバックグランドにしたもので、多様化する消費者ニーズに対応した新しい「食」のシーンの提案でもある。
「不採算店だから業態を変えたと誤解される場合があるんですが、そうではないんです。この業態の開設はあくまでも吉祥寺の立地特性を考えてのことなんです。新しい食シーンの提案であるし、そのパイロットショップでもあるんですが、将来的にはチェーン化を進めていく方針なのです」(日本KFC広報室横川すめおさん)。
しかし、チェーン志向しているからといって、メニュー構成や運営形態の面で、画一化を図っていこうと考えているわけではない。基本コンセプトのFHHをベースにして、立地条件や客層に対応して朝、昼、アイドルタイム、ディナー、アルコールタイム(メニュー)を導入するというように、バリエーションを持たせるということだ。
この店の場合は中心客層が若い女性なので、メニューは“売れ筋”だけで構成されているほか、ストア・オペレーションもモノシフトで、朝、昼、夜定番メニューでの運営だ。
メニューは“くいしんぼう農夫の台所料理”というコンセプトで、牧場セット六六〇円、収穫セット六七〇円、農園セット六八〇円、てりやきサンドセット五二〇円、チキンサンドセット五六〇円、サラダサンドセット五二〇円、サーモンサンドセット六二〇円、ランチセット(時間限定メニュー)五八〇円など八アイテムが主力メニューで、価格を七〇〇円以内におさえている。
これらメニューの内容は、たとえば農園セットであれば、フライドチキン2ピース+パン+コールスロー(ベイクドマッシュまたは温野菜)、チキンフィレサンドセットであれば、チキンフィレ肉とトマトのハーモニー、ランチセットは午前11時から午後1時までの提供だが、グリルドチキン+焼むすび+コールスロー+ハーブポテト+チーズパスタという内容で、すべて女性好みのするメニューだ。
もちろん、セットメニューを分解したパイスープ(三八〇円)、ベイクドマッシュ(二五〇円)、季節のパン(一五〇円)、サラダ(二五〇円~)ケーキ(三〇〇円)などもラインアップしているが、営業政策的にはセットメニューをチョイスさせる工夫で、格安感を訴求している。
「セットメニューはボリューム感もありますし、別売りのドリンク(三二〇円)を付けても一〇〇〇円以内ですから、ほとんどの方がセットメニューを注文されます。もちろん、飲み物にケーキだけというようなお客様もいらっしゃいますが、使っている食材自体がヘルシーということもありまして、セットメニューのオーダーは多いのです」(葉武孝幸マネージャー)
食材がヘルシーといえば、この店の食材は八八年9月、北海道八雲町に開設した直営農場「KFCプランテーション・ハーベスター八雲」で生産したものを使っており、すべて有機農法による安全なものだ。
FHH(フレッシュ・ヘルシー・ハンドメイド)の企業理念を体現したもので、ハーベスタークラブはそれを消費者に提供する場ということであるのだ。
客層は平日は八、九割が女性。土・日はファミリー客が増える。約七割が固定客で、この店の人気度を物語っている。客単価一〇〇〇円、月商一二〇〇万円をキープしている。
(しま・こうたつ)
「メニューのヘルシーさとボリューム感、そしてホスピタリティのある接客サービスで、お客様のハートをつかむ……」と語る葉武孝幸マネージャー。
・住 所/東京都武蔵野市吉祥寺南町一‐四‐一
・電 話/0422・49・2578
・営業時間/平日午前11時~午後10時、土曜日午前10時~午後10時、日曜日午前10時~午後9時