風光緑空・オープンエア店舗 「カフェ・デ・プレ」形式・マニュアル排除
フランス料理の大御所「レストラン・ひらまつ」もオープンエアの店舗展開に乗り出している。フランスの豊かな食文化の啓蒙を目的に「カフェ・デ・プレ」(東京都港区、03・3448・0039)をオープンした。一年目を迎えるが、月商は当初目標とした一五〇〇万円を大きく上回る二〇〇〇万円を達成。先行きが危ぶまれる喫茶店を尻目に今月二号店を表参道にオープンする。気軽さを前面に打ち出したオープンエア店舗の典型として注目されそうだ。
「カフェを生活の一部として利用していただくこと」(長坂滋郎総支配人)が同店のコンセプト。そのためお客に店のシステムや個性をいっさい押し付けることはない。灰皿、お冷の取り換えなど、退席を強要するような接客はご法度。形式じみた接客を払拭すべく、アルバイトのマニュアルも皆無。会計も自由な場所で行っている。
アメリカナイズのマニュアル化、省力化を重視したビジネス的な店舗に比べてフレンチスタイルはお客のアイデンティティを尊重するという訳だ。
オープンエアを展開する根拠にも、お客に対する干渉を控えたそれらのコンセプトが息づいている。気軽な雰囲気を引きたたせるために、店舗への出入りはどこからでも自由という具合だ。
成功の要因について「売上げの数字に固執すると、さまざまな戦略を手掛けてよろず屋的な店舗になってしまうが、当店では当初からの店舗コンセプトを崩してまで売上げを達成しようとは思わなかった」と語る。目先にとらわれず、フランス文化の啓蒙活動が実を結んだといえる。
同店では最近、従業員教育にもフランス文化の姿勢を取り入れようとしている。例えば、ウエートレスのケータリングやオーダーを店舗内でブロック制にして、ブロックの売上げに応じた能率給を支払うという方法。日本ではチップ制が根付かないため、従業員の接客態度はいま一つのところだが、能力給制を加えることでいままでのマニュアル化したサービスを改善しようとするものだ。
流行や消費者ニーズを前提にした飲食店が乱立する中で同店の一味違ったやり方は、飲食本来の楽しみ方を追求する展開として注目に値する。とくにオープンエアの活用法は、下降線をたどる喫茶店にとって、今後の対応策を探る好機といえよう。
店舗概要は、五〇坪、一〇〇席、午前11時~午後10時まで。無休。営団地下鉄日比谷線広尾駅下車〇分。