変わり種そば・うどん店紹介 「竹邑庵太郎敦盛」医食同源が信条

1994.12.19 66号 12面

「東京のそばは、本当のそばではない。本来の藪そばを知って欲しい」と、京都から東京へ乗り込んだのが、「竹邑庵太郎敦盛」(東京都港区、03・5473・8803)だ。

医食同源を信条とするおかみの小林恵子さんは、「全粒粉の黒いそばでこそ、血となり肉となるのです」と強調する。

そば粉は、十分に吟味された国産、外国産のそばを使い、「そばの身上は、ゆでたてを食べること」とし、手打ちにこだわらず機械打ちの細麺。

「何で染めているのかと聞かれる」くらい真っ黒なそばは、温かい「あつもりそば」と冷たい「追っかけそば」の二つがあり、価格は九〇〇円。

たれは、鰹節と昆布に、ミネラル豊富な黒砂糖の甘味で独特の味を出す。

薬味のネギへのこだわりは半端ではない。漆塗り椀に山と盛られた九条ネギは、毎日京都から宅急便で送られてくる新鮮京野菜。

脇に添えられた梅干しは、紀州から取り寄せ塩抜き後、はちみつに漬け、まろやか風味に仕上げた梅干しらしからぬ梅干し。「色抜きさせずに塩抜きするのがポイント」と、作り方は明かさない。

すべての食材が健康につながり、「東京のように喉越し、香りを味わうのではなく、全身で味わって欲しい」という。

そば、薬味すべてが多めの盛りだが、「栄養学に則っての量。この量を食べてこそ、初めて栄養と言えるのです」。

器にもこだわり、「あつもり」は、京都の職人に作らせた檜のせいろだ。玉手箱風せいろのふたを開けると、熱い湯気の中に黒いそばが見える。すのこの下に熱い湯を張ることで、老化の速いゆでたてそばの味を、少しでも長く楽しんでもらおうと配慮する。

そば、器など調度品にも、「本当の良さを知ってもらう」心意気が感じられる。

開店当初は、昼間の客をターゲットにしていたが、今は、逆転して夜の客が増えているという。

「東京は、東京流の食べ方があるのでしょう。好奇心から来た人も、今は選択しているところでしょう」と楽観的だが、「食べて健康につながる食へのこだわりは通したい。東京の味には妥協せず、本当の味を知ってもらいたい」と、東京で奮戦する。

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