中国料理 新業態/低料金メニュー/コスト削減で経営効率アップ工夫を

1995.01.02 67号 29面

中国料理は料理の形態から価格まで幅が広いので、レストランビジネスでは最も影響を受けにくい業態といえる。

この業態はホテル内の宴会対応の高級レストランから街中の大衆レストランまで、多様な営業スタイルの店が存在する。

客は自己の飲食ニーズに合った店を多くの中から選ぶことができるわけだが、しかし、やはりバブル経済が破綻したあとは、会社利用や接待需要が減少したこともあって、高級レストラン、高単価なものは敬遠されがちだ。

中国料理の雄「聘珍楼」(本社=横浜)は、本体の聘珍楼一〇店、聘珍楼茶寮二店、湾仔一店を含め国内一三店、海外にも香港二店、バンコク一店の計三店を出店しているが、国内においては重装備の店、軽装備の店の二段構えで出店と取り組んでいる。

重装備店は聘珍楼、軽装備店は茶寮、湾仔を指すわけだが、長引く不況下においては、広角度での市場戦略を展開しているわけだ。

店舗の出店は物件の規模や立地において、その形態を決定するが、本体の聘珍楼については「低価格メニュー」の提供や運営形態の変更、強化充実などで、一定客数をつかむ努力をしている。

これは例えば、単価の安い(五〇〇~一〇〇〇円)飲茶料理を夜も出すという工夫、夜のディナーコース(八〇〇〇~一万円)をビジネスランチ(コース料理)にもシフトして四〇〇〇~五〇〇〇円クラスで提供する、あるいは、少人数用のメニューを導入して、セット料金を引き下げるといった工夫など、店舗の運営ソフト面でさまざまな考え方を採り入れている。

聘珍楼茶寮は肉まんなど点心類を特化した、いわば“中華のファストフードショップ”といったもので二年前からの出店、湾仔(ワンチャイ)は香港小皿(屋台)料理(五〇〇~六〇〇円)をラインアップした業態で、一年前からの出店だ。

両店ともに小回りの効く業態であるので、先行きFC展開も考えており、消費低迷時代や低価格志向時代の切り札として、出店を積極化していく方針だ。

このほか、経営の効率化、コストコントロールの面でも成果を上げている。とくに、食材については、共同一括仕入れで香港やアメリカなど海外からも安くて質のいいものを確保しており、この面でも収益力を高めることに成功している。

年商一〇〇億円。新年度も多面的な市場戦略を展開し、業績を高めていく方針だ。

「北京」はホテル内での出店が主体で、芝パークホテルをはじめ、名古屋観光ホテル、大阪東洋ホテル、仙台プラザなど七店舗を出店しており、都市型の高級レストランとしての地歩を築いている。

東京・芝パークホテルの北京は、典型的な都市型立地の中国レストランだが、接待利用の減少などで業績の推移は明るくない。営業の落ち込みをどう防ぎ、損益分岐点を維持するかが大きな課題だが、ホテル・レストランは高いというイメージが強いので、価格の見直しも一つの対応策と考えている。

メニュー価格については、すでに、たとえば八〇〇〇円のコース料理を六〇〇〇円に引き下げるというように二割前後をダウンさせている。

料理は旬の材料を使った春夏秋冬のコース料理を提供しているが、メニューの作り方も懐石料理の繊細さを採り入れるなど、“アートな雰囲気”を訴求している。

また、グループおよび多人数対応の料理提供として、四〇種のメニューからチョイスしてオーダーする「バイキング方式」の食べ放題を導入しており、お仕着せでなく好みのものが食べられると客の評判は上々だ。

もっとも、これは土・日・祭日だけの営業形態で、昼四〇〇〇円、夜五〇〇〇円という料金システムだ。

こういった対応策によって客単価のアップはまだだが、夜の客数は微増してきており新年度上半期までは現状維持が期待できるとしている。

「銀座四川」は(株)東京近鉄食堂(本社=東京・銀座)が経営する中国レストランで、五年前までは近鉄飯店として知られた店だ。

法人の接待利用および個人の高単価利用が大幅に減少したので、二年前から価格を三割引き下げたが、しかし、集客アップ、売上げ増には結びつかないという結果になっている。

もちろん、コストを削減して収益力をアップするという考えもあるが、これもすでに限界にきており、また食材の質が落とせないという厳しい方針もあるので、抜本的な消費不況(集客増)の対策はないという考えにいきついている。

このため、新年度も店舗の運営サービスの基本を守り、消費が回復するまで“ガマン”するという静観の構えだ。

聘珍楼の新業態「湾仔(ワンチャイ)」田町店。香港名物の屋台小皿料理をテーマにしている。店内も香港の街の賑わいをイメージ。FC化を計画している

消費不況でも中国料理はメニュー、価格の面でも弾力性があるので、他の業態に比べ集客力は強い(芝パークホテル「北京」)

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