飲食店成功の知恵(62)開店編 変わった食材を見つける

1995.03.20 72号 17面

ひと口に食材といってもいろいろある。試しに市場へ出かけてみよう。魚市場にはこれまで見たこともない魚がずらりと並んでいるだろう。青果市場では、エンドウマメひとつでもいくつもの種類があることに驚くに違いない。しかもそれらは季節ごとにどんどん入れ替わるのである。

もちろんお店には売価があり適正原価があるのだから、どれでも自由に使えるというわけではない。当たり前である。大事なことは、魚や野菜にはそれだけの種類があるということだ。そしてそのことをよく認識することなのである。何かの本で読んだくらいではすぐに忘れてしまうが、実際に自分の目で確かめれば強烈な印象が残るはずである。

前回も述べたが、メニューづくりの基本は材料である。たしかに調理技術も大切だが、どんな技術も適切な材料なくしては意味がない。一流のシェフたちが材料の大切さを強調するのは、彼らがそのことを熟知しているからだ。もちろん、同じ材料、たとえば一尾のイワシでも、一流シェフの手にかかると素晴らしい一皿になる。それは技術のすごさである。しかし、鮮度の落ちたイワシでは、いかに一流の腕をもってしてもどうしようもない。結局、料理は材料なのである。

また、消費者の飲食店に対する価値観も大きく変わってきている。少し前までは、フランス料理などの高級イメージや、ハイレベルな調理技術に振り回されていたが、最近は素材重視に変わってきている。たとえば、いくらおいしくてもイワシはイワシである。それがどうしてこんなに高いのか、と疑いの目で見るようになったのだ。

つまり、調理技術が足りなければ、材料でカバーすることができるということだ。そして、勘違いしている人が多いのだが、消費者の本物志向とかこだわりは、実は使用する食材そのものに向けられているのである。だから、自店しか手に入らない材料を持っていれば、それだけで差別化のパワーになる。それなら、ありきたりの材料をこね回すよりも、自店だけの変わった食材を探すことを考えるべきである。

もちろん変わった食材であるからには、お店の中で座ったまま手に入るはずはない。自分の目と耳と足、そして舌を使って探し出さなければならない。ただし、すぐに探し出せるという保証などどこにもない。これは断わっておく。簡単に探せるようなら、すでに誰もが使っているはずである。

生鮮品の場合は産直ルートをつくるのが早道だが、焦ってはいけない。下手な鉄砲も数撃ちゃ当たるというが、そういう心のゆとりがなければなかなか探し当てられるものではない。わざわざ交通費と時間をかけて行くのだから、などとケチな考えを起こしてはいけない。気分転換の旅行のつもりで出かけてちょうどいいのである。まして、相手あっての取引である。いきなり押しかけて行って安く売ってくれでは通らない。

また、加工食材や半加工食材などは、次々と新製品が開発されているが、ふつう、そういう情報はなかなか小規模店までは届かない。それらを上手に利用することで、どれほどメニュー開発が楽になるか分からないのに、その存在すら知らないお店が大半である。したがって、これらもまた変わった食材ということができる。

これらのコンビニエンスフーズについては、食材業者に声をかけて、新しいものが出たらすぐに教えてくれるように頼んでおくといい。取引している業者が扱っていないものなら、メーカーに直接電話してみよう。また、春や秋に開かれる大規模な食品展には必ず出かけてみることだ。

フードサービスコンサルタントグループ

チーフコンサルタント 宇井 義行

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