お店招待席 加賀料理「大志満」 名物メニューは懐石弁当
銀座四丁目、銀座コアビル九階に一三年前オープン以来つづく、季節感溢れる懐石弁当は、今や知る人ぞ知る名物弁当となっている。
四チェーン店のうち、ニューメルサ店での懐石弁当が雑誌などで紹介され知名度が上がっていたこともあるが、オープン以来、価格、ボリュームを変えず、メニューの内容は季節に合わせて替えている弁当の人気はなかなかのもの。
「場所柄、買物帰りの客が多いと予想していたのですが、意外に弁当を食べるのが目的という人が多い」(小松康子店長)
懐石弁当は、「黒谷」一八〇〇円、「高瀬」二三〇〇円、「鶴仙」二七〇〇円の三種類。内容はすべて同じにし、「鶴仙」の一八品を最高に、それぞれ二品ずつ品数を減らしている。
一時は一〇〇食を仕込んだこともあったが、すべてを手作りとしているだけに、納得の味を出すには七〇~八〇食が妥当とする。このため、現在は一日平均七〇~八〇食を毎朝仕込む。
「黒谷」と「鶴仙」に人気があり、「午前11時のオープンだが、午後1時半ごろには品切れ状態。手作りの味が人気の秘密でしょうか」という。
加賀料理と謳っているだけに「できるだけ加賀の素材を使うようにしている」。
味噌、醤油はもち論、冬はズワイガニ、ブリ、またイワガキ、麩まんじゅう、加賀梨など加賀ならではのものを現地から取り寄せる。
懐石弁当はランチだけ。そのほかは昼・夜とも同じメニューを出しているが、懐石すべてに付く「治部椀」は、加賀の郷土料理として自慢の一品だ。
里芋、インゲン、ニンジンなど季節の野菜と合鴨を煮込み、小麦粉でとろみをつけたアンをかけ、わさびを天盛りにしたものだが、これを食べに来る人もいるという。一品料理(一三〇〇円)としても出している。
「加賀御膳」(二八〇〇円、三九〇〇円、四八〇〇円)、加賀懐石(六五〇〇円、八五〇〇円、一万円、一万二〇〇〇円)、そして人気の「季節の小懐石」(五五〇〇円)、「天ぷら御膳」(二八〇〇円、三六〇〇円、四八〇〇円)がある。
季節感を重視するのが和食。メニューのマンネリ化を防ぐため、毎月一回行う「味禄会」で年一回は各自が試作・試食したメニューを発表させるなど「料理人に競争意識をもたせています」。
「味禄会」は、一四~五年前から行っている会費八〇〇〇円でドリンク付き、この日一日限りの“幻のメニュー”を食す会である。
大多数が常連客のため、エビがだめ、肉が嫌いという客に対し「できるだけ要望に沿うようほかのもので代替する」が、一番気を使うのが「御飯と味噌汁、そして治部煮の味付け」で、特に御飯は、開店前に全員が「試食するよう指示」しているほどだ。
「全部を食べて欲しいからわがままを聞くようにしています」(大橋功調理長)
四つの支店は、メニューをすべて連動させている。「新宿の常連客が銀座店へ寄った時、安心して食べてもらえるから」で、味に大きな地域差はないとする。
一番人気は「黒谷」(1〓800円)=写真(上)。ふたを開けたとたん「かわいい!きれい!」の声が飛び交う。「鶴仙」(2〓700円)=写真(下)は三段重ねで、ふたは自分で開ける。御飯、味噌汁、治部煮が別につく
落ち着いたたたずまいの入り口。店内は相席をとらないため、落ち着ける。女性店長ならではの細やかな心配りは、毎朝のミーティングで受け継がれていく
「大志満」ギンザコア店
〈創業〉昭和58年11月
〈所在地〉東京都中央区銀座五‐八‐二〇、ギンザコア9F(03・3574・8080)
〈営業時間〉午前11時~午後10時、年中無休
〈店舗面積・席数〉一七三坪、一六〇席
〈従業員数〉正社員二八人、パート一一人
〈客単価〉昼三〇〇〇円、夜六〇〇〇円
〈一日来店客数〉三五〇~四〇〇人
〈平均月商〉六〇〇〇万円
〈客層〉四〇代以上の女性をメーンに接待客の男性
〈人気メニュー〉三種類の弁当、季節の小懐石
写真展に行く前、友達二人と一緒に立ち寄った庄司桂子さん=写真左=は、銀座店を利用して六~七年になる。
加賀料理が好きでもあり、味に外れがないのが良いという。
器、分量、雰囲気など女性に合っており、三人とも異口同音に、サービスをする女性の応待がとても気に入った。躾が良いと強調する。
「ランチタイムに制限がなく、場所を移してお茶を飲む必要がないので、安心しておしゃべりが楽しめます」
今まで、新しい所を開発しようと試みたが、結局ここに戻って来ました。「安心できるからでしょうネ」と結んだ。