飲食トレンド 鉄板焼きに赤ワインはよく似合う いま赤ワインがブーム

1996.04.15 99号 1面

最近、鉄板焼き店で赤ワインのオーダーが急激に増えている。以前ワインといえば、赤ワインは「わからない、飲みずらい」といった声が多く、白ワインが圧倒的に支持されてきた。ワインブームの昨今、業種業態を問わず各飲食店で赤・白ワインがラインアップされたが、そこでも白ワインの人気偏重は依然続いたままである。ところが鉄板焼き店では逆に赤ワインが白ワインを上回る人気をみせ始めているのだ。なぜ鉄板焼き店に限り赤ワインの伸びが顕著なのか。ワインブーム、薬用効果など要因はさまざまだが、本命は客の目前で調理するシェフの存在だ。

「赤ワインの出足はもはや仏レストランよりも鉄板焼き店の方が良い」。あるホテル関係者はこう話す。事実、ワインのオーダーで赤ワインが過半数を超えた鉄板焼き店は多く、「赤ワイン消費拡大の牽引役は鉄板焼き店だ」という声もあるほどだ。

「最近のワインブームでお客にワインの知識が浸透し始めている。以前は飲みやすい白ワイン一辺倒だったが、料理に合わせてワインの赤・白を選ぶ傾向が目立つ」(横浜うかい亭)

同店でも赤ワインのオーダーは右肩上がりの一途で、白ワインの人気を上回る勢いだ。

「バブル期は来店するやいなや高級肉のみをオーダーしビールで流し込むようなお客が多かったが、最近は前もってコース料理をオーダーし一品一品に赤白ワインを合わせて楽しむ傾向が強い」(ホテルメトロポリタン・山海亭)

高級焼き肉店と勘違いしてた成金客が減り、鉄板焼き本来の楽しみを目的に来店するお客が増えているというわけだ。

また、「もとより、鉄板焼き店は接待などに使う高級店のイメージがあり、ワインも一部のお客に楽しまれる程度で、一般のお客が気軽にワインを楽しめる雰囲気ではなかった。だが最近は他のレストランのカジュアル化の影響もあり、食事を気軽に楽しむお客が増えている。赤ワインの人気もそれに端を発するのでは」とし、年配者に偏っていた客層もいまでは幅広くなりカップル客、家族客は増える一方だという。

この二店に代表されるように、食事やワイン、また鉄板焼き本来の楽しみ方をお客が覚えた、というのが赤ワイン人気の一般的要因とみられる。が、人気の要因はそれだけではない。

「赤ワインは動脈硬化の予防に効果がある、という学説が認められてからオーダーが飛躍的に増えた」(ホテルオークラ・さざんか)という声が多いのだ。フランス人は動物性脂肪をたくさんとるにもかかわらず心臓病にかかりにくい、という現象「フレンチ・パラドックス」は、赤ワインに豊富に含まれる“ポリフェノール”が動脈硬化の予防に効果があるため、という学説がこのほど実証され、年配者のあいだで赤ワインの人気が急上昇なのだという。同店では、白ワインと赤ワインの人気が逆転、いまや赤ワインがオーダーの七割を占めるそうだ。

が、これだけならば一般飲食店にも赤ワイン人気が共通してもいいはずだ。なぜ鉄板焼き店ならではなのか。

「鉄板焼き店はカウンターを島で分け個々のお客に目前で対応しなければならない。当然シェフは料理のみならず、会話、おすすめ、パフォーマンスにいたる営業やサービスのすべてをこなさなければならない。料理に合うワインの話やワインに関わる話も自然にでて、それがワインのセールストークになる。お客からみてもソムリエのようなぎょうぎょうしさがないので気軽にアドバイスを求められる。シェフとの身近なコミュニケーションを通じ、分かりにくかった赤ワインの魅力に気づいたお客も多い」(パレスホテル立川・明日香)。シェフとのコミュニケーションが最大の理由だという。前述の人気要因を裏付けるのも鉄板焼き店のシェフの営業力やサービス力があってこそというわけだ。

鉄板焼き店の雄「ホテルオークラ・さざんか」でもそれを重視し、サービス経験豊富な料飲部員を鍛えて鉄板焼き店のシェフに採用するという。

どうやらシェフの存在が鉄板焼き店の赤ワイン人気を支えているといえそうだ。赤ワインの売れてる鉄板焼き店を取材した。

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