FCビジネス点検 「モスバーガー」㈱モスフードサービス FC出店は狭き門

1996.04.15 99号 6面

まず人間性と意欲

ハンバーガーチェーンの「モスバーガー」といえば、飲食FCではマクドナルドに次ぐビッグ企業だ。九六年3月期決算では直営六八店、FC一三一一店の計一三七九店、売上高一二五〇億円(前年比三・三%増)〈推計〉を計上する。

モスバーガーは昭和47年6月、東京・板橋の成増でスタートした。わずか三坪のミニ店舗。この第一号店に加え、水道橋、神楽坂店と直営二店を出店した。これら三店をベースにして、早くも48年11月には名古屋市新端にFC第一号店を開設、チェーンビジネスの端緒をつかんだ。

54年11月一〇〇店、61年五〇〇店、平成3年一〇〇〇店とハイテンポでチェーンを拡大し続け、今回の地位を築いたわけだ。

年間七〇~八〇店の出店ペース、二〇〇〇年には二〇〇〇店に迫る勢いだ。

FC展開については新規出店に加え、加盟店サイドでのサブチェーン化も進んでいるので、店舗開設にはおのずと加速がつくということになる。

少ない場合で一オーナー当たり二、三店、多いオーナーで一四、五店の出店。モスのFC希望者(加盟案内書請求を含め年約二〇〇〇件)は多いが、しかし、加盟のハードルが高いのでこの道は狭い。

基本的には「人間性」「事業意欲」の有無がカギということになるが、年間ベースの新規FC出店は希望者の一割程度にとどまる。

店舗の出店形態はビルインタイプ、フリースタンディング、ドライブスルーの三つのタイプに分かれるが、立地にはこだわらない。人の往来が多く、集客が見込めれば、出店は自由だ。

商品開発力が強み

店舗開設資金(土地、物件取得費を除く)はビルインの場合、二五坪規模で三三七〇万円、ドライブスルーの場合は三五坪で六〇〇〇万円。店舗コストはバブル期に比べて二、三割はダウンしているが、FC出店の投資をさらに軽減するために、小型店舗(一五坪)の開発研究とも取り組んでおり、現在、実験的に直営で五店舗を出店している。

このタイプの店舗だと開設資金は現在の二分の一にダウンするとしており、年内にもFC出店がスタートできる見通し。また、ドライブスルーについても、住宅建設の「ツーバイフォー」を応用したローコストの店舗開発を進めており、これも近々のうちにFC出店が開始できるとしている((株)モスフードサービス広報室課長青木幸三郎氏)。

店舗当たりの平均的な売上げは月商八〇〇万円。ドライブスルーの場合は一〇〇〇万円を超える店舗も多い。利益は償却前で一二%以上。

FC展開については出店コストを抑えて、四、五年内に投資を回収する経営指標にある。出店コスト軽減策に加えては、店舗当たりの売上げを拡大する計画とも取り組んでいる。

これは現在、直営二二店(うち四店はサンドイッチのみ)で推進中で、朝6時から11時までにおにぎり(一二〇~一四〇円)、サンドイッチ(一六〇~一八〇円)の「朝食メニュー」を提供しているもの。

通勤途上のサラリーマンやOLなどの利用が多く、売上げが二、三割ほど増えるという好結果を出しており、いずれはFC店でも提供する。

売上げが拡大すれば、資本回収はさらに早まることになるが、モスバーガーの強味はなんといっても、効率にとらわれない手づくり志向のメニュー提供と、平均して集客力を発揮する商品開発にあるということだろう。

看板商品のテリヤキバーガー二九〇円をはじめ、モスバーガー二八〇円、ロースカツバーガー三〇〇円、モスライスバーガーやきにく三四〇円、モスライスバーガーきんぴら三一〇円などはその代表的なもので、個々の売上げ貢献度に確実性がある。つまり、売れない商品は存在しないということだ。

(しま・こうたつ)

モスバーガー神楽坂店(東京・新宿区)。昭和47、48年ごろ、モス創業期にオープンした成増、水道橋(日大)店に次ぐ直営三号店。この店の出店を契期にFC展開がスタート。48年11月、名古屋市新端にFC第一号店をオープン

・企業名/(株)モスフードサービス

・ストアブランド/モスバーガー

・設立/昭和47年7月(直営第一号店〈成増店〉出店/昭和47年6月、FC第一号店〈愛知・新端店〉出店/昭和48年11月)

・所在地/本部・事業部=東京都新宿区箪笥町二二、西日本事業部=大阪市淀川区西中島三‐二三‐九中里ビル九階

・電話/東京本部03・3266・7111、西日本事業部=06・885・5750

・資本金/一一四億一二〇〇万円

・代表取締役会長/櫻田慧(代表取締役社長/清水孝夫)

・店舗数/直営六八店、FC一三一一店、計一三七九店(平成8年1月末現在)

・売上高/一二五〇億円(平成8年3月期、前年比三・三%増)(推計)

・海外出店(合併事業)/台湾一一店、シンガポール、上海各五店

◆店舗開設資金(土地、物件取得費除く)

〈ビルイン二五坪タイプ〉

・店舗設計施工管理費一六〇万円

・内外装施工費一三〇〇万円

・什器備品八五〇万円

・空調設備費二五〇万円

・看板および取付費一五〇万円

・原材料一〇〇万円

・包装資材一〇〇万円

・開店時諸雑費一五〇万円

・開店時広告宣伝費七〇万円

計三一三〇万円

〈ドライブスルー三五坪タイプ〉

・店舗設計施工管理費三二〇万円

・内外装施工費二四九〇万円

・什器備品一四〇〇万円

・空調設備費五五〇万円

・看板および取付費五〇〇万円

・原材料一三〇万円

・包装資材一二〇万円

・開店時諸雑費一五〇万円

・開店時広告宣伝費一〇〇万円

計五七六〇万円

◆FC加盟システム

・加盟金/二〇〇万円

・保証金/四〇万円

・ロイヤルティー/月間売上げの一%

・広告宣伝費/月間売上げの一%

・契約期間/二年(自動更新)

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