惣菜弁当の殿堂(9)としまや弁当「チャーシュー弁当」 臨海工業地帯のソウルフード
「としまや弁当」は千葉県袖ヶ浦市を拠点に系列約25店舗を有するロードサイド弁当店。地元ではガッツリ系の「チャーシュー弁当」で名をはせている。その名物弁当の内容は、甘辛だれで煮立てた煮豚を白飯にのせたシンプル丼。630円と決して安くはないが、濃いめの甘辛だれが、臨海工業地帯で働く重労働者から絶大な支持を受け、人気不動を誇る。また、ある大物芸能人の“好物発言”により知名度が拡大。遠方からの目当て客も増えている。1978年の発売以来、変わらぬ味を守り続けている、内房名物「チャーシュー弁当」を紹介する。
●営業概況:ビジネス旅館から弁当チェーンに発展
1973年ビジネス旅館で創業し、75年仕出し弁当事業を始め、以降「としまや弁当」でチェーン化した。現在、千葉県袖ヶ浦市を拠点に直営15店舗。地元では、国道沿いに大型駐車場を有する“ガッツリ系”の弁当店として知られている。
●調理概要:人気商品すべてに甘辛だれを使用
材料は、煮豚、白飯、甘辛だれ、漬け物のみ。調理方法は、煮豚を3mm厚に切り、甘辛だれに入れて煮立て、白飯にのせるだけ。昼のピーク時は作り置きで、以外はツーオーダーで提供している。
味の決め手は、醤油、スパイス、野菜などを煮立てた、門外不出の甘辛だれ。濃い口とフレッシュ感が特徴で、これが実に白飯に合う。常連客の重労働者からは、白飯と甘辛だれを大盛りで注文されることが多い。
また、豚肉との相性がよいことから、「とんかつ弁当」(ソースカツ丼)と「バーベキュー弁当」(豚焼肉丼)の調味(どぶ漬け)にも活用されている。
甘辛だれは、創業以来、変わらぬ味。セントラルキッチンで毎日仕込まれ、1日おきに各店に配送される。
●販売実績:約20年間顔を張る人気不動の上位3品
「チャーシュー弁当」の販売実績は、通年変わらず日販約300食(15店合計)。同じ甘辛だれで調味する「とんかつ弁当」と「バーベキュー弁当」も同格で、この上位3品が約20年間、同店の顔となっている。また、追走する「イカフライ弁当」と「とり弁当」も同じ甘辛だれで調味されている。まさにこの甘辛だれが調味の生命線といえる。客層は男性客が8割を占める。
●ポイント:内房の両雄はチャーシューとバーベキュー
千葉県・内房の臨海工業地帯には2つの名物弁当がある。「としまや弁当」発祥の「チャーシュー弁当」と、木更津市の老舗「浜屋」を元祖とする「バーベキュー弁当」である。そしてこの両雄は、なにやら芸能人と縁がある。サーフィン好きの大物芸能人や地元出身の有名歌手が好物発言したことで知名度が拡大。盛田健作千葉県知事が断行した東京湾アクアラインの大幅値下げ効果を追い風に県外客を増やしている。きっかけはともあれ“ソウル弁当”の存在感を再認識させた好事例であり、B級グルメの新潮流ともいえよう。
●会社概要
(株)としまや商事 本社所在地=千葉県袖ヶ浦市今井1-58/事業内容=カバさんマークでおなじみの「としまや弁当」(直営15店舗)を経営。袖ヶ浦市を拠点に市原市、千葉市、木更津市、君津市、富津市などに出店。のれん分けの系列店が約10店舗。
●食材の決め手
コニシ醤油(濃口)
四季の風土を生かした伝統製法
1873年創業の醤油蔵。房総の四季の風土を生かし、昔ながらの製法で丸1年かけて熟成させた、うま味の濃さが自慢の濃い口醤油。「地元客に向けた味付けは昔からなじみのある地元メーカーの調味料に限る」というモットーで愛用。房総の味覚を演出するのに欠かせないという。規格=1斗缶など各種