ニューヨーク通信 外食ビジネスの新発想(76)ミッション・チャイニーズ・フード
○アメリカナイズした独創的な中国料理 世界のホットなレストラン10にランクイン
開店前から話題になった、サンフランシスコ生まれの中国料理店、「ミッション・チャイニーズ・フード」。ニューヨーク・タイムズ紙も、「ついにニューヨークに上陸」という記事をオープン3ヵ月前にのせた。定評のあるザガット誌によって、ニューヨークで唯一、「世界で最もホットなレストラントップ10」の一つに選ばれ、時には2時間待ちの行列覚悟で行かねばならない。これほど話題を呼ぶ店は、いったいどんな店なのだろう。(外海君子)
●特徴:前衛店が並ぶロケーションのアメリカン・チャイニーズ
同店のロケーションに選ばれたのは、ローワーイーストサイドという、実験的、前衛的な店があちこちにあるエリア。なかなかふさわしいロケーションである。
同店で出す料理は、中国料理に似て非なり。シェフのダニー・ボーウェンさんによると、北方及び東北の中国料理に最も影響を受けた料理だという。アメリカナイズされた独創的な中国料理ということらしい。
●メニュー:中国料理では使わない材料もふんだんに使用
メニューは、サンフランシスコ本店と8割がた同じ。アメリカ人の好きなナマズを使った四川流料理あり、豚の耳のチャーシューのテリーヌあり、ホット&サワー・ドレッシングをかけた羊の舌とイカの温野菜サラダあり、羊肉団子の鉄板焼きあり、フェンネルシードやココナツ、マカダミアナツ、パストラミ、アンチョビ、フェンネル・シードなど、およそ中国料理では使わない材料もふんだんに使っている。お客からは「スパイスが強すぎて素材の味が分からない」「濃厚すぎる」などのコメントもあるが、なかなか興味深い、ダイナミックな料理が並んでいる。こういったアメリカナイズされた中国料理を、アメリカ人は待っていたのかもしれない。
聞くところによると、シェフのボーウェンさんは、元インディーバンドのフロントマンであったそうだ。独創的でエネルギッシュな料理が生まれるのは、そういった背景のせいかもしれない。
値段はリーズナブルで、4$から16$。料理1品につき、75¢をフードバンクに寄付している。
●発祥:世界のホットスポット10で唯一のNY、中国料理の店
世界のホットスポット10のリストには、パリ、バルセロナ、ロンドン、シンガポール、ストックホルムにある店がランクインしており、NYで挙がったのは同店だけ。中国料理もこのリストの中で同店だけだ。店は、好奇心と期待から行列覚悟で来たお客の活気にあふれている。
●事業データ
ミッション・チャイニーズ・フード(mission chinese food)/所在地=154 Orchard Street New York NY40.728385-73.9835759/開業日=2012年5月/営業時間=昼正午~午後3時、夜5時半~翌朝午前0時/席数=バーも入れて41席/客単価=20~35$
●人気メニュー5
「スライス・クックド・ベーコン(ベーコン、上海餅、苦瓜、湯葉、チリオイル)」(12$50¢)
「ソルトコッド・フライドライス(サバ、チャイニーズ・ソーセージ、レタス、卵の炒飯)」(12$50¢)
「麻婆豆腐」(12$50¢)
「スマッシュド・キューカンバーズ(キュウリ、チリ、ごまのペースト、ガーリック)」(4$)
「ブロッコリ・ビーフ・ブリスケット(ブロッコリーと牛肩ばら肉の煮込み)」(16$)