外食史に残したいロングセラー探訪(82)餃子の王将「餃子(6個入り)」
◇高校生に無料券を配ってブレーク!! 飲食店サービス券の元祖 各店舗で毎日ギョウザを包む
ギョウザの有名なチェーン店といえば「餃子の王将」だろう。全国チェーンでありながら、学生が多い場所では大盛りのチャレンジメニューを入れたり、女性客の多い店ではデザートを増やしたりなど、画一的ではなく、各店舗の個性を重視した展開をしている。京都で創業した同店が、ブレークしたひとつのきっかけがギョウザ1人前無料券。まだ珍しかったクーポン券を契機に行列のできる繁盛店となった。
●商品の発祥:無料券でアピール
中華料理店として開業した1967年頃、味に自信があり低価格でも、客が呼べず苦戦していた。当時、関西で大人気だったのが、「〓〓(みんみん)」のギョウザ。創業者の加藤朝雄さんは、味が複雑で、ニンニクやショウガ入りのスタミナ食であるギョウザに魅力を感じる。売上げが思うように伸びない中、ギョウザを看板メニューにすることに決意。「餃子の王将」と名前を変えた。
とはいえ、すぐに客足が伸びるわけではない。食べてもらえば分かると、「ギョウザの無料券を四条大宮の駅前で配りました。飲食店のクーポン券はなかった時代で、弊社がさきがけと言われています」と経営企画部長の内田浩次さん。
●商品の特徴:学生の行列で話題に
駅前でギョウザ無料券を配っても、受け取ってもらえず、うまくいかなかった。考えた末、高校の前で配ることに。すると、食べ盛りの学生たちがやってきて、行列ができる店となった。これが話題となり他の客も増えていった。
同店のギョウザの魅力は、ボリューム、品質、価格にある。サイズは大きめで、具材は、国産豚肉、キャベツ、ニラ、ニンニク、ショウガと調味料。同社ほどの企業規模でも、ギョウザは冷凍しない。セントラルキッチンで作ったあんと皮を、全て各店舗で包むのである。
安さも、昔から続く魅力だ。創業当時1人前80円が一般的だったギョウザを50円で提供。今なお税込みで東日本231円、西日本210円という低価格である。
●販売実績:売上げの17%がギョウザ
ギョウザは、全店合計で1日平均約200万個売れる。売上げに占める比率は約17%。最も売れるメニューだ。次に、焼めし、鶏の唐揚と続く。
同社では、本部主導という画一的な店づくりは目指していない。各店長に店舗運営の大半を権限委譲している。「食の原点は、母親の手料理です。大衆中華をお客さまの注文に合わせオープンキッチンの店内で手作り調理し、出来たてを提供。地域に愛されるお店を目指しています。今後は東日本への出店に注力し、まずは1000店舗まで広めたいですね」と内田さんは語る。
●企業データ
社名=(株)王将フードサービス/ 本部所在地=京都市山科区西野山射庭ノ上町294-1/店舗数=国内675店舗(中国大連4店。2013年10月末現在)/事業内容=中華料理レストランチェーン。1967年12月創業。写真は、1号店の京都四条大宮店(改装後)。経営方針は、創業当時から受け継ぐ「早く、おいしく、安く」。そして安心・安全かつ衛生的な食事処への追求を掲げる。