メニュートレンド:ロングセラーの中にメニュー開発のヒントあり 「古奈屋」
人気テレビ番組で特集されるなど、今、カレーうどんの人気が高まっている。その火付け役のひとつとなったのが番組でも紹介された、1983年創業、33年の歴史を持つ、うどん専門店の「古奈屋」。同店では、数あるうどんメニューの中でもカレーうどんを看板メニューとして掲げ、今や、“古奈屋のカレーうどん”はロングセラーとなり、さらに、ここにきて注目度がアップしている。長く人気のあるメニューには、必ずや客のハートをつかむヒントがあり、メニュー開発に役立つはずだ。
●元祖・クリーミー系カレーうどん 客の9割が注文する看板メニュー
古奈屋のカレーうどんは、「明治に発祥したカレーうどんの歴史を変えた」とまで称される逸品だ。その理由は、“クリーミー系カレーうどん”を誕生させたことにある。創業当時、カレーうどんといえば、通常のかけ汁に入ったうどんの上に、片栗粉でとろみをつけたカレーあんがかけてあるか、かけ汁自体にカレーあんを溶かしたものが一般的だった。
一方、古奈屋のカレーうどんは片栗粉は一切、使っていないが、まるでポタージュのようなやさしいとろみがある。「お客さまは、みなさん、最後の一滴までスープを飲み干してくださいます」と営業管理部長の戸川里美氏。
この秘伝のカレースープの仕込み方は門外不出だが、概要は、まず野菜、果物、肉、スパイスを混ぜ合わせて、長時間炒めてペースト状のカレールウを作る。これを溶くかけ汁は、鰹本節、宗田節、鯖節、むろ節の4種類の魚介系節でだしをとっただし汁と、醤油、砂糖、みりんを合わせたかえしを混ぜ合わせたもの。「かえしに加える砂糖の量は、極限まで減らしています。甘いと途中で飽きてしまいますから」とスッキリしたスープだからこそ、おいしく飲み干すことができるというわけだ。
カレールウをかけ汁で溶き、仕上げに牛乳を加える。その量は、「全水分量の3分の1くらい」というから、かなりの量。これこそが、カレーうどんに新ジャンルを築いた“クリーミー系カレーうどん”と呼ばれるゆえんである。
スープだけではなく麺も特徴的だ。古奈屋のうどん麺の径は約3mm×2mmと、一般的なうどんよりも細い。「うどんは太いもの」という固定観念にとらわれず、細麺にした点も斬新だ。細麺の方がスープが絡みやすく、また食べやすいので女性客に喜ばれている。うどんの原材料は小麦粉と食塩水のみ。小麦は国産とオーストラリア産をブレンドしている。「国産小麦だけだと食感が物足りないんですね。オーストラリア産を加えることで、うどん独特のコシやもっちり感が出ます」と戸川部長。
材料をとことん厳選し、仕込みも惜しむことなく手間をかけたメニューだったが、看板メニューどころか、注文する人は1割程度。そんな状況が10年ほど続いたが、食べた人は必ず「こんなカレーうどん、他では絶対に食べられない」と衝撃を受ける。それが口コミでジワジワと伝わり、創業10年目くらいから注文客が右肩上がりに増え出し、今ではこれを目当てに来店する客が圧倒的に多い。古奈屋を行列のできる店にのし上げたカレーうどんは、堂々の“看板メニュー”となり、さらに、最近のカレーうどん人気で熱い視線が注がれている。
●店舗情報
「古奈屋 巣鴨本店」 所在地=東京都豊島区巣鴨3-37-1/開業=1983年2月/営業時間=午前11時~午後4時30分(LO午後4時) 日・祝祭日午前11時~午後6時30分(LO午後6時) 定休日毎週1回/坪数・席数=6坪・12席/1日平均客数=100人~/平均客単価=約1200円
●愛用資材・食材
「天使の海老」 輸入元:ゴダック(東京都中央区)
ニューカレドニア産。甘味とうま味は他のエビに比べて豊富で、化学薬品などを一切使用せず、自然環境になるべく近い形で養殖しているので、安全性も非常に高い。「6年前から取り入れています。生でも食べられるくらい鮮度がいいものを天ぷらにしているので、頭から尾まで丸ごと召し上がっていただきたいですね」と戸川部長。
規格=1kg(30~40尾)