メニュートレンド:仕入れ値でワインが飲める常識破りの“会員システム” ベルサイユの豚
肉バル業態の「ベルサイユの豚」が、飲食業界のおきて破りともいえる、とんでもないワインの“会員システム”を実施している。一見、店側の利益が見込めないようなシステムにもかかわらず、一時期、落ち込んでいた売上げが驚異の回復を達成し、繁盛店へと生まれ変わった。常識破りの発想で集客に弾みをつけた成功のカギとは?
●売上げを伸ばすことが最優先の秘策 それでももうかる理由がある
「ベルサイユの豚」が提供しているワインの会員システムとはこうだ。(1)客は入会費200円を払うと、「ベル豚 シルバー会員」になり、カードケースがもらえる。(その場で、同店のネットサイトでFacebookの「いいね!」をクリックすれば200円は免除)(2)その後、ボトルワインを1本注文するごとに、そのワインの産地や味わいなどが書かれたワインカードがもらえる(3)ワインカードが5枚貯まると、手持ちのワインカードから好きなワインを1本プレゼントされる。
ここまでは、一般的な会員システムの特典と大差はない。スゴイのはここからだ。ワインカードが10枚貯まると、客は好きなワインを1本プレゼントされると同時に、「ゴールド会員」に昇格する。そして、このゴールド会員の特典が前代未聞なのである。その特典とは、「ベルサイユの豚」全5店舗で、すべてのワインが仕入れ値価格で飲めるというもの。
つまり、店が保有している全ワインを通常価格の約3分の1の価格で飲めることになる。普通だと手が届かないモエ・エ・シャンドンやドンペリといった超プレミアムワインも仕入れ値で飲める。文字通り“おいしい”話で、客が反応しないわけがない。しかし、こんな破格値で提供して、果たして店の採算が取れるのかという疑問が当然湧く。
「そこは、徹底的にシミュレーションしました。要は売上げなんです。売上げを伸ばすことで、原価コスト、人件費、家賃などの経営コストが相対的に下がります。売上げを伸ばすには、当たり前のことですが、多くのお客さまにご来店いただく必要がある。このワインの会員システムは、店を満席にするための仕掛けなんです。だって、こんなお得なシステムがあれば『行ってみよう!』という気持ちに誰だってなりますから」と語るのは井比政貴事業部長。
現在、シルバー会員は約5300人に達し、「ベルサイユの豚」の渋谷店と池袋店の月間売上げは、同店を経営するダイヤモンドダイニンググループの約260店舗の中で連続トップに輝いた。一見、型破りにも見えるサービスシステムの背景には、緻密な計算が存在することも忘れてはならない。
また、お得な会員システムが集客の引き金になったとしても、それだけでは繁盛店にならない。料理、サービス、店の雰囲気など飲食店としての総合力があってこそ、仕掛けが有効に働く。「ベルサイユの豚」では、肉バルならではの料理へのこだわりも徹底している。スペシャリテ「骨付きロース炭火焼き」は、48時間、香草でマリネした骨付きリブロースを炭火で豪華に焼き上げたもの。「うまい料理+お得なワイン」の組み合わせによって相乗効果を生み、成功事例につながっているといえるだろう。
●店舗情報
「ベルサイユの豚 田町」 所在地=東京都港区芝5-26-20 建築会館2階/開業=2015年6月/営業時間=月~木、土、祝前日 午後5時~11時30分(LO10時30分)、金 午後5時~翌午前2時(LO午前1時)、日・祝日定休/坪数・席数=47.51坪・112席(うちテラス席32席)/平均客単価=約3000円
●愛用資材・食材
「フルール・ド・セル(塩の花)」 伯方塩業(愛媛県松山市)
熟成肉のうま味を引き出す塩
ゆっくりと時間をかけて結晶させた大粒の塩。自然の風と太陽熱で蒸発結晶させた輸入天日塩田塩を日本の海水で溶かして原料に。カリッとした歯応えとおだやかな塩味が特徴。
「天然塩ならではのおだやかな塩味が、肉のうま味や脂身の甘味を引き出してくれます。うちの豚肉料理には欠かせない調味料です」と井比氏。
規格=1kg