アポなし!新業態チェック(113)「エスタジ(Estaji)グリル&ビア」Brick St.店

2016.11.07 453号 13面

 ●イートアンド系列、肉料理の新業態 西武新宿駅の高架下、リニューアル施設に

 「大阪王将」や「太陽のトマト麺」などを展開するイートアンドが、子会社であるA&Bを通じて、東京・新宿に肉料理を主体にした新業態「エスタジ(Estaji)」をオープンした。

 同店が出店したのは、西武新宿線の「西武新宿駅」高架下に位置する、飲食テナントのみの小規模な商業施設「ブリックストリート」だ。これまで物販店が中心だった同施設を、西武プロパティーズが4月から6月にかけてリニューアルした。4店舗の飲食店が並ぶ同施設の中で、同店は靖国通り側から2番目に位置する。高架下という立地から細長い区画となる店舗に、一人客に対応するバーカウンターや大人数のパーティーも可能な個室などを備えた大型店だ。

 「グリル&ビア」というタイトル通り、メニューにはさまざまな肉料理が並ぶ。「シュラスコ風串焼き塊肉のステーキ」(250g=1680円、500g=3000円、800g=5500円)や「丸太のTボーンステーキ」(500g=3980円)といった豪快なメニューから、「熟成仔羊のロースト」(1480円)、「鴨肉のロースト」(1580円)、「メカジキのグリル」(1680円)など、多種類のグリル料理を楽しめる。開業時には生ビール15種類、ワインを50種類取り揃えたというドリンク類も豊富だ。

 店名の「エスタジ」は、イタリア語でエクスタシーを指す「estasi」を元に、日本の食文化を採り入れたという意味で「s」を「j」に変えた造語。同社は、近年さまざまな形で精力的に新業態を出店し、既存の主力業態だけに依存しない多業態化を目指している。

 ★けんじの評価 良店だが立地のハードルに不安も

 同店が出店した「ブリックストリート」は、長い間米国の輸入衣料品店などが入居する商業施設「アメリカン・ブルバード」だった。店づくりに制約が多い高架下というスペースであり、新宿エリアの中でも歌舞伎町に隣接する特殊な立地であるため、近年の経済環境下では物販店を中心にした商業施設は厳しい状況だったのだろう。今回のリニューアルで飲食店中心のテナント構成になったことは理解できる。

 同店は、「ブリックストリート」の中では新宿駅寄りに位置しているが、やはり中心地からのアクセスには少しハードルが高い。店づくりやメニューなど、現在の外食トレンドに沿った魅力ある店舗だとは思うが、立地的な条件はいかんともし難い。同店の隣には、カフェ大手の経営する最新業態が出店している。果たして両店の力で、このエリアの価値を変化させることができるだろうか。今後の経緯に注目したい。

 そもそも、JRの新宿駅と西武新宿線の新宿駅は微妙な位置関係にある。歩いて移動できないほどの距離ではないが、間に靖国通りを挟んで歩行者が最短で行き来できる動線はなく、乗換駅というには離れすぎている。かつては、西武新宿線を延長して両駅が接続するという構想もあったようだが、さまざまな事情により実現しなかったと聞く。もしこの構想が実現していたら、どうなっていただろう。せめて、両駅を結ぶ直通の地下通路などがあれば大きな変化が生まれるのではないか。地下鉄副都心線の新宿三丁目駅やJR新宿駅の新南口の開発により、次第に変化する駅南側のエリアと比較しながら、そうしたことを考えたりする。

 (外食ジャーナリスト 鷲見けんじ)

 ●鷲見けんじ=外食チェーン黎明期から、FFやFRなどの動向を消費者の目線で見続けてきたアンチグルメな庶民派ジャーナリスト。顧客の気持ちを外食企業に伝えるべく、甘口辛口を取り混ぜた乱筆乱文でチェーンの新業態をチェック。朝マックとロイヤルホストのカレーフェアをこよなく愛する外食ウォッチャー。

 ●店舗情報

 「エスタジ(Estaji)グリル&ビア」Brick St.店 開業=2016年6月17日/所在地=東京都新宿区歌舞伎町1-30-1 Brick St.内

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