米国外食動向を読む! ハンバーガー第一主義を宣言? 「時短・効率・衛生」の三拍子を愛好・称賛

2017.02.06 456号 16面
FFファースト。日本食のアメリカ入国を拒否すべきだ、とならなきゃよいが…

FFファースト。日本食のアメリカ入国を拒否すべきだ、とならなきゃよいが…

 大統領就任演説でアメリカ第一主義を宣言したドナルド・トランプ新大統領。数々の強硬発言が物議を醸しているが、こと米国の外食産業に与える影響はどうだろうか。全米レストラン協会の調査によると、外食産業の市場規模は約7830億ドル(2016年推定)。全米労働者の約10人中1人が外食産業に従事しており、支持率にも大きく影響を及ぼしそうだ。トランプ新大統領と外食産業の関係はいかに?(NY在住記者・外海君子)

 ●賃金改善にブレーキ

 約50万軒の飲食店で組織された世界最大の外食団体・全米レストラン協会は、新政権をおおむね歓迎しているようだ。多くの移民が低賃金で働いている外食産業は、新大統領が提唱してきた移民規制に対して微妙な立場にある。しかし、ホスピタリティー関連事業を展開してきた背景もあり、税金削減と規制改革を推進するだろうとの期待もある。トランプ氏の勝利が確定した際、同協会は「業界の目標や課題に向け新政権と協力したい」と冷静な声明を発表していた。

 その後、労働省長官に「カールス・ジュニア」などを展開するファストフード大手、CKEレストランツ・ホールディングスの最高経営責任者・アンディー・パズダー氏が起用されると、同協会は大いに歓迎。パズダー氏は「最低賃金の引き上げはレストラン経営を圧迫。店舗閉鎖につながり労働者の雇用を失う」と言い、最低賃金の引き上げや医療保険制度改革を推進してきたオバマ政権とは、真っ向から対立。新大統領のスタンスが色濃く出た人選となった。

 ここ数年、最低賃金を時給15$に引き上げる運動が強まっていたが、風向きが変わる可能性もある。ちなみにパズダー氏の年収は449万ドル、116円レート換算で約5億2000万円(2012年)。最低賃金の引き上げに反対する同長官に対して労働者は反発している。

 ●ハンバーガーを推奨

 さて、一般的に共和党は保守的、民主党はリベラルであるが、政治哲学がそうであれば、生活様式もしかり。首都ワシントンで約30年、日本料理店を経営してきたサイード・アザリ氏は「民主党支持者は新しい料理に挑戦する。共和党支持者は伝統食を好む」と言う。新大統領もそうなのだろうか?

 新大統領は派手なライフスタイルで知られるが、洗練された高級料理よりもミートローフやスパゲティなどの伝統食を好むらしい。選挙運動中はハンバーガーやフライドチキンを食べている姿が見られた。労働者の支持を狙った演出でもあったが、実際にファストフードの愛好家なのだ。ビジネスでの成功体験をもとに「時短・効率・衛生」の三拍子が揃ったファストフードを称賛しているという。

 新大統領は「ハンバーガー一つ間違えば、マクドナルドは破滅する。ウェンデーズもしかり。新しい料理を食べるよりも安全安心」と説き、「公式晩餐会は止めて時間とコストを節約し、会議室の机の上でハンバーガーを食べるべき」とも言っている。果たして、これからのホワイトハウスの厨房はどうなるのだろうか。

 ●公邸の厨房にも注目

 ホワイトハウスの食卓に影響を与えるのはファーストレディだ。大恐慌の時代、エレノア・ルーズベルト夫人は経済的かつ栄養価の高い料理を並べ、戦後、ジャクリーン・ケネディ夫人はフランス料理のエレガンスさを取り入れた。高学歴のミッシェル・オバマ夫人はホワイトハウスの敷地に菜園を作り、ヘルシーな食事に苦心した。あまり表に出てこない元モデルのメラニア夫人は何をホワイトハウスに持ち込むのだろうか?

 未知数の多いトランプ政権。アメリカ国民は、その行方を見守っている。

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