惣菜弁当の殿堂(32)ぎゅーとら ぎゅーとらカツ丼・コロッケ 特徴がないのが特徴

2017.07.03 461号 14面
ぎゅーとらカツ丼 398円(税抜き/550~570g)

ぎゅーとらカツ丼 398円(税抜き/550~570g)

 ◇基本調理に忠実、鮮度訴求を徹底 圧倒的に強い三重県のローカルデリカ

 「特徴がないのが特徴」。控えめな面持ちとは真逆に圧倒的な強さを誇るローカルデリカがある。三重県内に28店舗を構える食品スーパー「ぎゅーとら」の「ぎゅーとらカツ丼」と「ぎゅーとらコロッケ」である。カツ丼は日販約3000食、コロッケは1万食を超える人気ぶりだ。強さの秘訣は「本来の調理を忠実に守る手作り」と「当日早朝から仕込みを始める鮮度訴求」にある。基本回帰の大切さを感じさせる定番デリカの繁盛事例だ。

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 ●調理概要:一鍋一食のカツ丼、生仕込みのコロッケ

 カツ丼の決め手は「一鍋一食」の手作りに尽きる。惣菜でカツ丼を調理する場合、ホットプレートやスチコンを使って多数のカツ煮を一度に作り、切り分けて白飯に盛り、作り置きで提供するのが一般的。だが本品の場合、3連ガスレンジに3鍋並べて3食ずつ、専従スタッフにより手作りされる。つまり一度に3食しか出せないが、「作って並べて売れたら作る」を繰り返すだけに、手作り感と鮮度感は抜群。日販200食以上の店では専従スタッフが一日中作り続けており、客から注文されて作るツーオーダー提供も珍しくない。

 コロッケは当日早朝から物流センターで仕込みが始まる。男爵芋をふかしてつぶし、牛ひき肉を炒め、両方を合わせて成形・パン粉付け。店舗にチルド配送され揚げたてが売場に並ぶ。いわば「当日限定の生コロッケ」である。冷凍技術が著しく進化したとはいえ、やはり仕込みたての“生”はひと味違う。これが45円なら売れないワケがない。

 ●販売実績:カツ丼だけで年商の1%強

 カツ丼は、レギュラー398円、ハーフ298円、ヒレカツを使ったプレミアム498円の3種類、合わせて日販約3000食。販売構成比はレギュラー65%、ハーフ25%、プレミアム10%。同社(28店舗)の年商約356億円(昨年度)のうちカツ丼の売上げだけで年商の1%を超えるというからスゴイ。1個45円・日販1万食以上のコロッケは「もうけ度外視の奉仕品」に位置付けられている。

 ●商品発祥:戦前戦後のレシピが今に受け継がれる

 同店の発祥は昭和4年に大阪で開業した精肉店「うし虎」。当初からコロッケを売っていたらしく、昔ながらのレシピが今に伝わっているという。昭和10年に1個25銭だった記録が残っている。

 カツ丼の発祥は同店が伊勢市に移転して食品スーパー1号店「牛虎」を開業した昭和33年。かたわら食堂を手掛けたところ、カツ丼が一番人気となり、客の要望でテークアウト販売を始めた。それが現在に受け継がれている。

 ●ポイント:独自スリットで軟らかく強い食感

 カツ丼の豚肉は三元豚。肉質の軟らかさを売り物にしてきたが、顧客アンケートで「食感が弱い」との指摘が増え、強い食感の肉質に変更した。すると今度は「硬すぎる」との声が多発。折衷策として後者に独自のスリット(切れ目)を入れることで両者の満足を獲得した。

 ◆会社概要

 ぎゅーとら 本社:三重県伊勢市西豊浜町655-18

 「ぎゅーとら」=1929年大阪で精肉店「うし虎」を創業。49年三重県伊勢市で「牛虎」と改名し開業。58年スーパーマーケット1号店を開業。2002年商号を「ぎゅーとら」に変更。現在、総合食品スーパーとして三重県内に28店舗を展開

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