外食の潮流を読む(39)焼肉食べ放題「ワンカルビ」関東進出が郊外外食を熱くする!
10年以上前から「大阪に焼肉食べ放題のすごい店がある」と常々聞いていた。しかしながら、展開している場所が郊外ロードサイドということで、出張のついででは同店を訪ねる時間的な余裕がなかった。同店とは「ワンカルビ」で、現在関西66店舗と九州10店舗を展開している(2018年7月1日現在、以下同)。同店が関東圏進出第1号となる花小金井店(東京・小平市)が4月17日にオープンしたので早速その日に訪ねた。18時に店内は満席だった。
まず、従業員の表情に感動した。恐らく高校生・大学生の従業員は皆、満面の笑顔で、十分にトレーニングを積んできたことを感じた。営業時間は17時からで、それ以外の営業をしていない。メニューは「ひとつ上の焼肉食べ放題 2時間の幸せを」とうたい、2時間制で95品3866円と48品3326円(各税込み)の二つのコースとなっているが、年齢別に価格設定がなされている。48品のコースでは、3歳以下無料、4~6歳464円、小学生1663円と低年齢の価格を低くしているというのは他でも見られるが、50歳代2991円、60歳代2656円、70歳代以上2322円と、シルバー世代の料金を3段階で低くしている。70歳代以上は一般の30%オフに相当する。「私は関係ないし……」と思って眺めていたのだが、60歳代の私は何とその真ん中の料金だった。するとがぜん割安感を感じ、親、子、孫と3世代で利用する光景が容易に想定された。
提供方法はテーブルオーダーバイキングで、従業員はテーブルの横で膝をついてオーダーを伺う。そして、オーダーされたメニューをクイックに提供して広いテーブル上に置いていく。肉のクオリティーは高度に安定している。お客さまは食べ放題の食材を取るためにテーブルを離れる必要がない。標準店舗は110坪、31テーブル、180席。これを社員2~3人、アルバイト登録50人で運営している。
同店は「幸せな団らんを、社会に。」をミッションに掲げているワン・ダイニング(大阪・西区、社長/高橋 淳)の主力業態で、他に豚肉、鶏肉の食べ放題も展開して総店舗数117店舗を擁している。2018年3月期の売上高257億5805万円(前期比109.9%)となっている。社員の平均年齢は28歳。
同社は精肉の小売業を発祥として、外食事業である焼肉店の1号店は1993年3月に「炙屋曽根崎店」をオープン、現在の業態は06年6月からスタートしている。08年10月に会社を分割し、16年11月より1&Dホールディングスのもとで小売業のダイリキとグループ経営をしている。
同店は私が住むところから電車を乗り継いで1時間15分程度のところにあるが、オープン初日の感動が忘れられず既に3回訪ねた。同店が業界にとってとても刺激的な存在であることを、先行する焼肉食べ放題をチェーン展開している広報担当者に電話で伝えたところ、「ワンカルビは関東エリア進出に総力戦で臨んでいる」と語った。
(フードフォーラム代表・千葉哲幸)
◆ちば・てつゆき=柴田書店「月刊食堂」、商業界「飲食店経営」の元編集長。現在、フードサービス・ジャーナリストとして、取材・執筆・セミナー活動を展開。