惣菜弁当研究所:ローカル名物紀行 おぐら 瀬頭店「チキン南蛮」
◆南蛮酢とピクルスのW酸味が美味 酢豚をヒントに余剰鶏むね肉を活用 延岡から宮崎名物を経て
21世紀、最もヒットした地方料理といえば、文句なく宮崎の「チキン南蛮」だろう。いまや外食中食を問わず全国的な人気を誇っている。だが、よく見てみると、鶏唐揚げにマヨネーズをかけたり、チキンカツにタルタルソースだったり、変な「チキン南蛮もどき」も数多い。そこで、本当のチキン南蛮をおさらいするため、発祥店「おぐら」の事例を紹介する。
●発祥と普及:中華と洋食が融合
昭和30年代、「おぐら」の創始者である甲斐義光氏は、宮崎県延岡市の洋食店「ロンドン」のコックを務めていた。当時、鶏料理が盛んで丸鶏を店で切り分けていたのだが、人気がある鶏もも肉に比べ、鶏むね肉は余りがちだった。そこで中華好きの甲斐氏は、酢豚(唐揚げ+甘酢あん)をヒントにチキン南蛮の原型を作り、まかないに定着させた。後、同僚の後藤直氏が独立して「直ちゃん」を出店し、まかないをメニュー化して延岡市内に広げたという。そのため、タルタルソースがないチキン南蛮は「直ちゃん」が発祥とされる。
甲斐氏は昭和31年に宮崎に移り洋食店「おぐら」を創業。昭和34年、エビフライに付くタルタルソースと、かつてのまかないを合わせ、現在の主流であるチキン南蛮をメニュー化し、宮崎市と延岡市でチェーンを展開。同店を手本にしたメニュー化が県内に広がり宮崎名物に定着した。8店舗は親族と分社化し本家は現在2店舗。
●調理概要:ピクルス7種を配合
鶏むね肉に塩、コショウをふり、卵黄、小麦粉を付けてラードで揚げる。揚げた後、南蛮酢に約2分しっかり漬ける。毎朝作る自家製マヨネーズ、ピクルス(玉ネギ・ニンジン・キュウリなど7種類)のみじん切り、香辛料を合わせてタルタルソースとする。
●販売概況:テイクアウトも好評
旗艦店の瀬頭店は31卓・160席。日中11時間営業で平日は約600人、繁忙日(休日/行楽・帰省シーズン)は約1200人を集客。そのうち約6割がチキン南蛮を注文する。繁忙日は客足が途切れず、売り切れ閉店もあり。店に入れない客や、店に来れない高齢客に対し弁当を販売。
●ポイント:意外にもアッサリ
揚げ物とマヨネーズの組み合わせで超コッテリに見えるが、南蛮酢とピクルスの酸味が刺激的で、意外にもアッサリと食べられる。県民から「また食べたくなる」と表現される、南国の食文化に育まれた味わいだ。
●「チキン南蛮」1,010円(税込み)
弁当・約385g(料理)約272g(白飯)
販売実積:日販・平日約360食 繁忙日約720食
※店内提供と弁当の合計
●店舗概要
「おぐら 瀬頭店」
経営:(有)おぐら