外食の潮流を読む(45)幸楽苑HDと「いきなり!ステーキ」「焼肉ライク」とのwin-winな関係

2019.03.04 481号 11面

 2018年の年末12月26日に行われた幸楽苑ホールディングス(以下幸楽苑HD、本社/福島・郡山市、代表取締役社長/新井田昇)とダイニングイノベーション(本社/東京・渋谷区、代表取締役社長/松宮秀丈)の合同記者会見は衝撃であった。幸楽苑HDはこの日、ダイニングイノベーションが展開する「焼肉ライク」のフランチャイズ契約を締結し、「『焼肉ライク』郊外モデル共同開発プロジェクト」を発足すると発表した。

 幸楽苑HDでは前年の17年10月にペッパーフードサービス(本社/東京・墨田区、代表取締役/一瀬邦夫)が展開する「いきなり!ステーキ」のフランチャイズ契約を締結した。それに続いての「焼肉ライク」だ。

 「いきなり!ステーキ」は13年12月に1号店を銀座四丁目・三原橋近くにオープン。20坪ながら月商は“いきなり”3000万円を突破した。以来、東京の中心地からベッドタウンのターミナルに進出し、大型商業施設や郊外ロードサイドと新立地を開拓していった。

 18年11月30日に363号店となる秋田東通り店をオープンして全国制覇を達成。18年の年間出店数202店に続き19年も210店の新規出店を計画している。500店舗突破は19年の6~7月が想定されている。

 「焼肉ライク」は18年8月29日、東京・新橋に1号店がオープン。たちまち評判となり、客単価1400円、16坪20席が1日20回転して月商1600万円。11月29日に東京・西新宿に2号店を出店。19年は渋谷、横浜、秋葉原、五反田の出店が予定されている。加盟店を希望するところが殺到し、現在70社が契約を待っている状態だという。今後の店舗展開は「5年間300店舗」を想定している。

 幸楽苑HDは郊外ロードサイドを主要立地として520店舗展開している。不採算店が続出するなど18年3月期において当期純損失32億2500万円を計上、金融機関と締結した財務制限条項に抵触した。

 幸楽苑HDにとって「いきなり!ステーキ」は事業再建の期待を担っているわけだが、現在16店舗が業態転換し、営業中だ(18年12月末現在)。これらの店舗は客数前年対比が平均で9月115%、10月109%、11月113%となっている。また、業務改革によって既存店も客数を戻し、業績を上方修正した。「焼肉ライク」は19年に10店舗展開する計画だ。

 ダイニングイノベーション代表取締役会長の西山知義氏は、「今後店舗展開を進めていく上で、郊外ロードサードで大きな実績を持つ幸楽苑HDと一緒に『焼肉ライク』の郊外モデルを共同で開発することは大きな力となる」と語る。

 幸楽苑HDにとって単一ブランドの過剰出店は経営戦略の過ちであったが、同社が培ってきた郊外ロードサイドでの店舗展開は大きな資産である。「いきなり!ステーキ」「焼肉ライク」ともども郊外ロードサイド出店に幸楽苑HDをパートナーとして選んだことは、そのノウハウを高く評価しているからであろう。

 (フードフォーラム代表・千葉哲幸)

 ◆ちば・てつゆき=柴田書店「月刊食堂」、商業界「飲食店経営」の元編集長。現在、フードサービス・ジャーナリストとして、取材・執筆・セミナー活動を展開。

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