マッチで偲ぶ外食史:藩 今はなきセゾングループの傘下で存在感を示した居酒屋チェーン

2019.11.04 489号 12面

 かつて日本には、百貨店やスーパーなどのグループ会社として存在する外食チェーンが数多くあった。しかし1990年代の後半以降、こうした流通系外食企業の多くは、業界の淘汰・再編の波に飲まれて消滅している。居酒屋「藩」を展開していたレストラン西武(当時)も、そんな流通系外食企業の一つだ。西武百貨店を中核としたセゾングループの外食部門を担う企業として、ファミリーレストランの「CASA」などを展開し、80年代にはさまざまな業態に挑戦し話題を集めた。

 「藩」の1号店がオープンしたのは82年。西武百貨店のキャッチコピー「おいしい生活」が、コピーライター・糸井重里氏の名声を不動のものにした年だ。翌年の平成元年にレストラン西武は東証一部に上場、著名デザイナーを起用したハイクラスなダイニングバー「オールドニュー」の1号店を出店している。

 90年代以降に大きく発展した居酒屋のスタンダードから見れば、「藩」はさほど大きな特徴がある居酒屋ではなかった。しかし当時の居酒屋の中では明確な店舗コンセプトがあり、百貨店系列の居酒屋チェーンとしてクオリティーの高さを売りにしていたように思う。

 その後、セゾングループが解体される中でレストラン西武は西洋フードシステムズと社名を変え、2002年にはTOB(株式公開買い付け)により英国コンパス・グループの傘下に入る。同社が生み出した多くの外食ブランドは切り売りされ、店舗は散り散りになった。栄枯盛衰という言葉が脳裏をよぎる。

 (イートワークス代表 入江直之)

 ※マッチは筆者のコレクションです。

 編集協力:株式会社イートワークス(http://www.eatworks.com/)

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