アポなし!新業態チェック(152)「京都宇治 藤井茗縁」東急プラザ渋谷

2020.04.06 494号 11面

 ●商業藝術がお茶をテーマに新業態 再オープンした東急プラザ飲食フロア

 DDホールディングス傘下の商業藝術は、昨年12月、京都・宇治の老舗茶園である「藤井茶園」の茶葉をメイン食材とする新業態「京都宇治 藤井茗縁」を、東京・渋谷に出店した。

 「藤井茶園」は、室町時代から創業480年余りという歴史ある茶園。同店ではドリンク類はもちろん料理や甘味にもその茶葉が使われている。

 出店したのは、再開発ビル「渋谷フクラス」内にある「東急プラザ渋谷」の6階飲食フロア。緑と茶、黒を基調カラーにしたモダンな和風の内装で、エスカレーター脇の空間と外部窓に面した明るい店舗だ。

 まずフードメニューは「鮭といくらの宇治茶漬け」(1300円)など3種類の「宇治抹茶 茶漬け」や、「きつねうどん」(900円)、「にしんそば」(1100円)といった麺類。10種類以上あるおばんざいから3種類を選び、茶飯と赤出汁をセットにした「茶懐石膳」(1500円)がある。

 甘味には「ほうじ茶のブリュレ仕立てパフェ」(1300円)のほか、「ぜんざい」「かき氷」「わらびもち」などの定番、各種ケーキや「宇治抹茶アイスもなか」(600円)など。

 同店の売り物であるドリンク類は、抹茶の「薄茶」(600円)と単一品種のみの「シングルオリジンのお抹茶」(900円~)、そして「玉露」「煎茶」「玄米茶」など各種のお茶が中心。さらに、「抹茶みるく」「ほうじ茶ジンジャーエール」(各700円)などのソフトドリンクや、「抹茶ビール」「抹茶スパークリングワイン」(各800円)のようなアルコール類も用意されている。(価格はすべて税抜き)

 ★けんじの評価 ユニーク企業の展開が興味深い

 昨年の暮れ、同店の出店を知ったときには、京都の老舗茶園のブランドを冠した「和風喫茶」的なカフェができたのか、という程度の認識だった。しかし今回、臨店のためにあらためて資料やメニューを確認しているうちに気づいたのは、同店が単なる“喫茶店”的な店ではなく、きちんと食事もできる飲食店なのだということだ。

 同店を訪れて、そばなどのメニューを食したが、価格に比べると、どれもかなり丁寧に作られているという印象を受けた。もちろん、それほど単価の高いメニューではないので本格的な和食の世界ではないが、こうした商業施設のようなロケーションなら十分だろう。メニュー構成としては、世代を問わず多くの女性に好まれる内容と感じる。

 店舗の内装はスッキリしたシンプルなデザインだが、もう少し遊びの部分が欲しい気はする。メニューの楽しさに比べて、やや物足りない気がした。

 商業藝術という企業は、過去にア・ルーム・ウィズ・ア・ビュウ、ラヴなど、いくつかのユニークな社名を経て、12年から現社名となっている。創業者の貞廣一鑑氏もまたユニークなキャラクターで、かつてはテレビ番組の「マネーの虎」にも出演していた。組織づくりや運営についても、独特のビジョンを持つ経営者だ。

 同社は17年にダイヤモンドダイニングの傘下に入るが、同年、ダイヤモンドダイニングはDDホールディングスという持株会社に移行する。現在、同世代の“カフェ系”企業の多くがこのDDホールディングスに集結している感があり、今後、彼らのグループがどのような展開を見せるのか、大変興味深い。

 (外食ジャーナリスト・鷲見けんじ)

 ◆鷲見けんじ=外食チェーン黎明期から、FFやFRなどの動向を消費者の目線で見続けてきたアンチグルメな庶民派ジャーナリスト。顧客の気持ちを外食企業に伝えるべく、甘口辛口を取り混ぜた乱筆乱文でチェーンの新業態をチェック。朝  マックとロイヤルホストのカレーフェアをこよなく愛する外食ウオッチャー。

 ●店舗情報

 「京都宇治 藤井茗縁」東急プラザ渋谷

 開業=2019年12月5日/所在地=東京都渋谷区道玄坂1-2-3 渋谷フクラス6階

 編集協力:株式会社イートワークス

 http://www.eatworks.com/

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