アポなし!新業態チェック(155)「麦と卵」吉祥寺店

2020.07.06 497号 11面

 ●北海道のイーストンが生パスタ新業態 北海道のブランド食材を使用したパスタ専門店

 札幌に本社を置く外食企業イーストンが、東京・吉祥寺に生パスタの新業態「麦と卵」をオープンした。同社は、北海道と東北、関東にイタリアンや焼き鳥、中華料理、バーなどを40店舗以上展開している。

 「麦と卵」は北海道産の小麦と「下川六〇(しもかわろくまる)酵素卵」という名のブランド卵を使用して店内で作る自家製の卵麺が売り物だ。この卵は、北海道北部の下川町にある、あべ養鶏場で生み出されたブランド卵。同店ではほかにも、道東の厚岸町でとれたアサリや十勝産の生モッツァレラチーズ、函館は道場水産のタラコなど、メニューに北海道のブランド食材を数多く使用している。

 同店のパスタは、トマトソース、ミートソース、クリームソース、タラコ、オイル系の5種類がメイン。「生モッツアレラチーズと《農家のベーコン》、茄子のトマトソース」「自家製北海道キーマ風スパイシーミートソース 下川六〇酵素卵添え」「ふわふわチーズたっぷり! 北海道カルボナーラ」「釜揚げシラスと厚岸産アサリのペペロンチーノ」(各1080円)、「絶品たらこスパゲティ」(880円)など、どれも食欲をそそるネーミングだ。サイドメニューには「フォカッチャ」(200円)やサラダがある。ドリンクは「コーラ」「アイスコーヒー」などの冷たいソフトドリンク(各280円)と「ビール」(580円)、グラスの「ワイン」(赤・白、各380円)だ。

 すでに「ミア・ボッカ」というイタリアン業態で、札幌だけではなく関東に複数の店舗を持つ同社だが、今回はパスタ専門店で勝負に出た。(価格は税込み)

 ★けんじの評価 クオリティーの高い自家製麺と食材

 同店の開業は2月の終わりだが、新型コロナウイルスの影響により、開業して1ヵ月余りの4月初旬から休業に追い込まれた。5月に入って営業は再開されたが、筆者が臨店したときも、まだ営業時間を短縮していたはずだ。オープニングを担当したスタッフは大変な苦労をしたことだろう。

 同店は、吉祥寺駅からアーケードに入ってすぐの路地を曲がった地下にある。階段を降りると券売機があり、14種類のパスタから選んで食券を購入する。店内には大テーブルやカウンター席といった横並びの席が多いが、雰囲気としてはカフェ風のデザインだ。

 パスタを食べてみた。生パスタのモチモチ感はそれほど過剰ではない。タラコやエビなどの食材も新鮮だし、あまり濃厚すぎず上品な味付けでメニューのクオリティーは高いと感じる。パスタ専門店としてはかなりレベルが高いだろう。

 筆者の個人的な希望なのだが、この料理は地下ではなく1階路面の太陽光が入る席でゆったりと食べたかった。筆者のような世代には、メニューの品揃えや店の造りなど、この店はかつて大流行したパスタ専門店を思い起こさせる。同店のメニューにはアイスコーヒーはあるがホットコーヒーなどの温かいドリンクがないようだ。デザートもない。オペレーションの関係なのかもしれないが、カフェのようにゆっくり時間を過ごすような使い方をする店ではないということだろう。「おいしいパスタだけを、わざわざ食べに行く」というような、あの時代と同じニーズが現在も多くあるのだろうか。むしろ、フードホールのようなスタイルにふさわしい業態かな、という印象が残った。

 (外食ジャーナリスト・鷲見けんじ)

 ●店舗情報

 「麦と卵」吉祥寺店

 開業=2020年2月28日/所在地=東京都武蔵野市吉祥寺本町1-9-2 パラッツォ地下1階

 ◆鷲見けんじ=外食チェーン黎明期から、FFやFRなどの動向を消費者の目線で見続けてきたアンチグルメな庶民派ジャーナリスト。顧客の気持ちを外食企業に伝えるべく、甘口辛口を取り混ぜた乱筆乱文でチェーンの新業態をチェック。朝マックとロイヤルホストのカレーフェアをこよなく愛する外食ウオッチャー。

 編集協力:株式会社イートワークス

 http://www.eatworks.com/

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