居酒屋の潮流を読む(中)「自分で注いで飲み放題」「焼肉」「90分制」の新業態が大繁盛

2021.02.01 504号 06面
テーブルに備え付けられたタップから自分で注ぐ(ときわ亭)

テーブルに備え付けられたタップから自分で注ぐ(ときわ亭)

路面店で店内の様子がよく見えることもポイント(ラムちゃん)

路面店で店内の様子がよく見えることもポイント(ラムちゃん)

ファサードを設けることができるとフリーのお客も来店しやすい(ときわ亭)

ファサードを設けることができるとフリーのお客も来店しやすい(ときわ亭)

 「2020年のヒット業態」といえば「自分でタップから注ぐ飲み放題」である。「タップ」とは蛇口のことだが、ここでいうタップは、機械の金属の棒を倒してビールやハイボールを注ぐサーバーを指す。これが各テーブルに備わっているスタイルだ。フードメニューは焼肉。要するに、ドリンクを注ぐのも、料理を作るのも全部お客にやってもらうというもの。

 このタイプの最初の店は、一家ダイニングプロジェクトが19年7月に千葉県柏市にオープンした「大衆ジンギスカン酒場 ラムちゃん」(以下、ラムちゃん)である。同店はすべて直営で、20年12月10日に千葉県木更津市にオープンした店は9号店となる。

 同様の業態でチェーン化しているのが「0秒レモンサワー 仙台ホルモン焼肉酒場 ときわ亭」(以下、ときわ亭)だ。こちらはチーズフォンデュをはじめとした多業態を展開しているGOSSOが19年12月、横浜西口に1号店をオープンし、20年12月末で10店舗となった。

 タップから出てくる飲み物は、ラムちゃんはハイボールで、ときわ亭はレモンサワーだが、飲み放題のルールは一緒である。「飲み放題」は「60分500円」で、延長の場合は「30分300円」。90分制ということが一つの目安になっている。客単価はラムちゃんが2500円、ときわ亭は3000円。

 筆者は、ラムちゃん御徒町店、ときわ亭渋谷店を体験している。これらの店が大変よく繁盛していることを知って、昨年9月、ときわ亭渋谷店にオープン開始の17時に入店しようとしたら「予約でいっぱい」と断られた。では後日予約を、とお願いしたところ、予約が取れたのは10日後であった。このような経験をしたことから、ラムちゃん御徒町店は予約をし、翌日に入店できた。

 ときわ亭渋谷店の客層は9割が学生とおぼしき20代前半の男女であった。女子が圧倒的に目立っていた。皆よく酔っ払って楽しそうに過ごしている。タップからはサワーが出てきて、加えるレモンの味付けは10種類のレモンシロップから2種類を選ぶ。このサワーのアルコール度数は8度で、大酒飲みの筆者でもすぐに酔っ払う。「90分制」にしているのは、ここが酩酊(めいてい)満足度といったものの限界かもしれない。自分も大学生の当時、バイト代が出たら焼肉食べ放題、飲み放題に行ったことを思い出した。

 「予約で席が埋まる」「お客の回転が速い」ということで、従業員は忙しく働いている。しかしながら、ときわ亭、ラムちゃんともに接客に笑顔があって丁寧だ。この2つのブランドが大繁盛しているからといっても、なかなか追随するところが出てこないのは、高度なオペレーション能力を必要としているからであろう。

 ちなみに、ときわ亭の売上げ上位3店舗は、横浜西口店(30坪62席)1300万円、渋谷店(25坪56席)1200万円、武蔵小杉店(50坪66席)1100万円となっている。同店を展開するGOSSOでは、同店を成長エンジンとして位置付け24年度に100店舗、チェーン年商100億円を想定している。

 (フードフォーラム代表 千葉哲幸)

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