外食の潮流を読む(73)「ランチラーメン」が拡大、居酒屋営業の危機を救う

2021.07.05 509号 11面

 コロナ禍にあって、居酒屋でランチタイムに店を開けてラーメン専門店として営業しているところが増えてきた。飲食業界では、いつしかこれを「ランチラーメン」と呼ぶようになった。

 この立役者はテイクユー(本社/東京都港区、代表/大澤武)。同社は東京都内に直営でラーメン店や居酒屋を十数店舗展開していて、他に「ステルスFC」によって全国に約100店舗のラーメン店を展開している。ステルスFCとは、決められた屋号ではなくオーナーが自由に店名を決めることができ、原材料の仕入れを本部が行うといった仕組みのFCである。ランチラーメンとは、このステルスFCをランチタイム限定で行っているものだ。

 同社がラーメン店を手掛けたのは2012年7月のこと。「鶏白湯」から始まり、「煮干し」が加わり、昨年の3月に「貝出汁」の直営店を出店した。また、加盟店が増えてきたことから、それぞれのスープがバッティングしないように、「担々麺」「二郎系」「濃厚豚骨」「博多豚骨」という具合にスープのレシピをストックするようになった。

 同社がランチラーメンのプロデュースを初めて手掛けたのは5年ほど前、ランチ営業をしたいという居酒屋から相談を受けたことがきっかけであった。それに対して同社では、居酒屋がランチラーメンを導入するための障壁を取り払っていった。

 その障壁とは、(1)設備投資が必要(ゆで麺機など)(2)スープを仕込みたくない(設備、レシピ、労力など)(3)レシピや売るためのノウハウを持っていない(4)ラーメン専門店に勝つ自信がない–このように、失敗するリスクが心配だということだ。

 同社ではステルスFCを展開するために、ラーメン専門のメーカーに、ラーメンの麺、スープ、かえし、油のスペックをオーダーして、これらを一括して加盟先に配送している。店舗はラーメン職人が不在だが、メーカーにはスープを大量に作るラーメン職人が存在する。そのため、ランチラーメンを導入する店舗は基本的にはコンロが2台あれば十分という。

 このようなソリューションによって、ランチラーメンは「提供時間が短い」「回転率が高い」「老若男女とターゲットが広い」「客単価が950円前後と比較的に高い」というメリットをもたらした。

 ランチラーメンのポイントについて同社代表の大澤氏はこう語る。「本来の居酒屋営業とのストーリー性が重要です。鮮魚の居酒屋を営んでいるところが担々麺を売っても売れません。当社が新しく考えた貝出汁がふさわしい。これは本来の営業と『魚介類』ということで一貫性があります。担々麺を出すのであれば、小籠包の店がふさわしい」。

 この4月末から5月にかけて、大澤氏はフェイスブックに同社がプロデュースしたランチラーメンの開業事例を続々と投稿している。コロナ禍で大澤氏が依頼を受けたラーメンプロデュースの案件が続々と開花しているのであろう。

 (フードフォーラム代表・千葉哲幸)

 ◆ちば・てつゆき=柴田書店「月刊食堂」、商業界「飲食店経営」の元編集長。現在、フードサービス・ジャーナリストとして、取材・執筆・セミナー活動を展開。

購読プランはこちら

非会員の方はこちら

続きを読む

会員の方はこちら

関連ワード: 外食の潮流を読む